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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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攻撃ではなく防御

「これが"静"と"動"の上位技までの技術になる。

 先も言ったように、これらはすべてスキルのように発動するものではない。

 技というよりも技術と言ったほうが、この世界では適切だろうな。

 20メートルも離れた壁にダガーを突き立てたのも、自己強化あってのことだ。

 "静"と"動"を合わせた"流"のような複合技もあるが、あとは最上位に分類される技術と奥義を残すのみだな」


 防御と回避に系統する"静"。

 攻撃と強化に系統する"動"。


 どちらも必要なものではあるが、まずは"静"を覚えてもらうことでパーティーの生存率が格段に上がる。


 今の子供たちに必要なものは攻撃ではなく防御、つまり"静"だと考えている。

 逆に"動"は力加減が難しく、必要以上の効果をもたらしてしまうだろう。


 何よりも"動"系統は、上位技まで到達して初めて十全な効果を得られる。

 それなら"避"を学んだほうが体得は遥かに早いし、その効果も高い。


「エルルに"静"を学んで欲しいと言葉にしたのは、そういったことからなんだ。

 防御と回避に特化した技術を学べば、フラヴィとブランシェが戻るまでの時間を稼ぐには十分だからな。

 何もエルルがひとりで魔物を倒したいって考えているわけじゃないだろ?」

「それは、そうだけど……やっぱりある程度の強さは欲しいよ……」


 そう思う気持ちも、すべては大切な家族のためにって理念からきてる。


 本当に俺たちは似ているな。

 性格も、物事の捉え方も。

 価値観すら似通ってる。


 "類は友を呼ぶ"、か。

 誰の言葉かは知らないけど、本当にその通りだな。


 何か胸がつかえたままのエルルに、俺はこう訊ねた。

 "自分ひとりで魔物を倒す強さと、みんなで力を合わせて魔物を倒す力、どちらを好むか"、と。


 これはずるい言い方になる。

 この子がどう答えるかなんてのは愚問だ。

 それ以外の言葉なんて、絶対に出てこない。


 そう返ってくるのが分かっていたとはいえ、それでも俺には嬉しい言葉だった。

 同時にこれは、エルル自身の覚悟にも繋がる力となるだろう。

 それを確信させる気配を、即答した彼女から強く感じた。


「みんなと一緒がいい!

 あたしは、みんなと強くなるの!

 みんなのために強くなるんだ!

 あたしのために頑張ってるんじゃないもん!」

「あぁ、わかっているよ」


 だから強くなれるんだ。

 誰よりも、何よりも強くなれるんだよ。

 それが分かるみんなだから、俺は技術を教えようと思ったんだ。


 小さな子の言葉にした大きな勇気に嬉しく微笑みながら、俺はエルルの頭を優しくなでた。

 くすぐったそうに目を細めるエルルは、嬉しそうに『えへへ』と笑った。



 *  *   



「――さて、ある程度は話した通りになる。

 復習になるが、教えた力はこの世界では異質だ。

 その力の使い方を相手に学ばせるような発言は慎むべきだし、戦闘中にぺらぺらと説明するのも感心しない」

「んー、それなんだけどさ。

 命がけで戦ってるのに、わざわざ今のはどうだとか、この技はこうだ、なんて話をしながら戦う人がいるとは思えないんだけど……」


 顎に指を当てたエルルはよく分からないといった表情を浮かべる。

 言いたいことも分かるし、言いたくなる気持ちも分からなくはないんだが。


「それほど深く考えなくていいんだ。

 人と敵対する場合は俺が倒すし、その相手をさせるつもりもない。

 だが、そういった人種もいるんだってことは、覚えておくといいよ」


 まぁ、そんなことを口走るやつは馬鹿じゃなく"阿呆"だ。

 真剣勝負の場で悠長に技術の説明をさせようなんてありえない。


 そんなものはマンガかアニメの中だけだ。

 本当に命をかけての勝負をしているなら、その一瞬で勝敗がつくからな。

 程度の低いとしか言いようのない阿呆と出遭ったら、俺がボコって終わりだ。


「ふむ、随分と不思議な連中がいるものだな。

 勝者となれる余裕や自信からきているのか?

 それとも自らの技術に酔いしれる輩だろうか」

「私にも理解できません。

 真剣勝負とは、一瞬のうちに勝敗が決する危険な世界。

 言葉を交わすのみならず相手の技術を訊ねるなど、正気とは思えません」

「盗賊などと呼ばれた無法者や、意識の低い冒険者には見られる傾向があると聞いたことがありますよ」

「だとすると、それなりにいるかもしれないな。

 我としてはその場に同席するだけでも情けなく思えるが」

「私が聞いていた冒険者像とはかけ離れすぎていますね。

 自由を誇りに生きている人だと聞いていたのですが……」

「そういった方も多くいますよ。

 残念ながらそれも人それぞれと言えるのかもしれませんが、少なくとも私が心から憧れる冒険者はここにいらっしゃいます」

「ふむ、なるほどな。

 それには我も同意できる」

「そうですね。

 私も同意見です」

「……話がまとまったのはいいことだと思う。

 だがなぜ俺を見ながら話をするんだ?

 俺は冒険者としての活動なんて、数回しかしてないぞ」


 依頼を受けたのも手紙の配達と捜索依頼くらいだ。

 あとは好き勝手に動いているだけって認識なんだが……。


(ぬし)はそれでいい。

 だからこそ行動を共にする価値がある」


 この世界に来てから同じことを数人から言われているが、俺にその自覚はない。

 よく分からない認識だが、嫌われていないならそれでいいか。


 好意的に思える気配を感じながら、ばつが悪そうに俺は視線を逸らした。

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