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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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いつにもなく

 31階層のゲート近くにある小道を横へ進み、突き当たりにある小部屋。

 スライムもいない20平米ほどの空間で俺たちは野営の準備を始めた。


 夕食までは結構な時間がありそうだ。

 なら模擬戦でもしようかと言葉にすると、子供たちは両手を上げて喜んだ。


 色々問題もあったからな。

 随分ともやもやが溜まってるはずだ。

 発散させるには体を動かすのがいいし、強くなるためにも経験を積ませたい。


 ここまで驚異的な魔物と遭遇していないから、不完全燃焼な気配を感じていた。

 思いっきり動ける相手がいるだけでもこの子たちにはプラスになるだろうな。


 この場所は、ゲートからわざと外れなければ来れない。

 31階層で全フロアを探索するような冒険者がいるとも思えないから、落ち着いて修練に励める。

 いきなり目の前に魔物が湧くのかも早めに確かめたいところだし、この階層はアクティブなスライムはいないようだ。

 それを信じきることは危険だが、とてつもなく素早い敵が出るとも思えない。


 通路との距離を考えると、ゲートに向かう冒険者の気配も感じ取れる。

 前方にゲートを見つけてから途中にある小道へ向かう連中も少ないはずだ。

 色々な意味で、ある程度は安心して休憩も取れる小部屋だろうな。


「今回はあたし、見学してるよ。

 しっかりとトーヤの動きを見て、"静"を学ぶんだ!」

「そうか。

 何か分からないことがあれば後で聞くよ」

「うん!

 頑張ってね、ふたりとも!

 今度こそトーヤをギャフンと言わせて!」


 ……そんな言葉はどんな状況でも出てこない。

 最近のふたりは俺に一撃かますことに(しゅう)しているような気がする……。


 思えば一度も攻撃を受けていなかったな。

 ブランシェに投げ飛ばされた時はさすがに焦ったが、あれも返した。

 まだまだ子供たちに負けるわけにはいかないから圧倒したほうがいいとは思うんだが、それがかえってこの子たちのストレスになっていたんだろうか。


 いや、そんな気配は感じないし、結局俺に強くなったと認めて欲しいんだな。

 それは十分すぎるほど肌で感じてるんだが、言葉にすると満足されそうだ。

 今はまだ言わないほうが情操教育としてもいい気がする。


「大丈夫だよエルルお姉ちゃん!

 今日はいけそうな気がするんだ!」

「ふらびいも、がんばるのっ」


 気合は十分。

 疲労感もない。

 周囲の安全も確保した。


 ブランシェは鋭い突きも覚えたからな。

 俺も気合を入れないと足元を掬われるな。


「ふむ。

 そろそろ(ぬし)も一撃を入れられるかもしれないな」

「そうならないように気をつけるよ」

「トーヤさんの技術、学ばせていただきます」

「今回は"静"の下位と中位を見せるよ。

 見ただけじゃ覚えられないだろうけど、何かの切欠にはなるかもしれない。

 技術の口頭説明は模擬戦が終わってからになるが」

「お気をつけて。

 ブランシェちゃんの気配がいつにもなく鋭いです」

「みたいだな。

 若干、入れ込みすぎてる気はするが、大丈夫だろ」


 そう簡単に"静"は使いこなせないと思っていたが、ブランシェはあの感覚を忘れてないだろうし、いざとなれば使えるようになるかもしれない。

 投げ飛ばされた時のようなことも考えられるし、注意するべきだな。


 フラヴィは元より安定した"静"を自然と使いこなしている。

 技こそ使わないが、それだけでもこれまでと同様に気をつける必要があるな。


「それじゃあ、始めようか」


 木製の短剣を持ち、ふたりの前にどっしりと構える。

 子供たちの緊張感が一気に張り詰め、飛び出すタイミングを見計らう。

 気配から気合が乗っているのを察してるな。


 察知に関しては随分と上達した。

 これなら戦闘にも活かせるようになってるはずだ。


 あとは実戦あるのみだな。

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