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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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もしそれを実現できれば

 作戦が功を奏したこともあり、子供たちの表情は明るい。

 今回遭遇したロックゴーレムは特殊な敵だろうが、今後もこういった厄介な相手が現れることもあると考えながら進むべきだな。


「物理的な攻撃が効かず、魔法攻撃が通る相手もいることが分かったと思う。

 しかし、強化魔法を使えば刃物や打撃で倒せるような、簡単な魔物でもない。

 今回のように打撃や剣術などを使って倒すなら、高い技術力が必要になる」


 たとえ身体能力を強化したところで限界がある。

 魔法は万能じゃないし、それに頼り切るのは危険だ。

 だが攻撃手段のひとつとして有効な技術なのは間違いない。


「今後はそれも踏まえた上での修練をしよう。

 当面の目標としては、強化魔法を使いつつ先を目指し、長時間の使用ができるようにしていこうか」


 もしそれを実現できれば、俺の予想では80階層でもクリアできると思えた。

 燃費が悪く、MP切れを含めたデメリットが目立つこの魔法技術を体得するだけで、迷宮を攻略している冒険者でトップクラスの強さを手に入れられるはずだ。


 それに加えて"静"と"動"を学ぶことによって、より磐石な強さを手にできる。

 その辺りにまで到達できれば、心の強さもある程度は培われるだろう。

 身体的に魔物であるフラヴィとブランシェは、体も人よりは遥かに強く作られてるはずだから、ふたりは極端に強くなれるかもしれないな。


 エルルは元より魔法に対する造詣が深い。

 もしかしたら、彼女独自の強化法すら編み出してしまうことだって考えられる。

 魔法を極めた先にあるものが俺には何か想像くらいしかできないが、少なくとも凄まじい力として発現できることは確実だ。

 ある意味では先が予想できないエルルの成長が、いちばんの楽しみではあるな。


 子供たちの未来像や育成方法を考えていると、エルルは首を傾げながら訊ねた。


「身体強化魔法って、どのくらい維持できればいいの?

 長時間となると、そう簡単に体得できないと思うんだけど」

「戦闘中に5分間維持できれば、まずは十分だよ。

 でもコツを掴めば気配察知と同じように伸びていくものだと俺は確信している。

 MPを消費した分だけ維持ができるはずだから、初めは体に薄い膜を張るようなイメージで使えばマナの消費を極端に抑えられるし、継続時間を長くするのはそう難しい話でもないんだ。

 フラヴィとブランシェは攻撃の瞬間だけ軽く使うことを心がけて戦い、エルルはその日の攻略が終わった夕食後に集中して学ぶ方が安全だろうな」


 いざと言う時に魔法が発動できないと、色々と問題になる。

 特にそんな状況となれば、エルルの精神に多大な影響を与えるだろう。

 それは前向きな意味での反省となればいいが、深い後悔にもなりかねない。

 できるだけその可能性を避けられるように修練をするべきだ。


 俺の言葉を聞き入る3人に、話を続ける。


「そしてもうひとつ、重要なことがある。

 ストーンマンと初めて戦った時にフラヴィが気になっていたように、一般的な武器、特に刃物の類は刃こぼれで済まないほど痛むことが考えられるんだ。

 いい武具ってのは良質な素材を使っているから刃が欠けたりし難い武器も多いが、26階層からここまでの魔物のほとんどは、ダガーや片手剣なんかでは攻撃しないほうがいいと思える相手だった」


 付呪的加工が施された魔導具には、耐久力を底上げされたものが多いと聞く。

 フラヴィの持ってるダガーは耐久力を無視したダメージを相手に与えるから、たとえ鋼鉄の魔物だろうと問題なく倒せるだろうが、どんな付呪がされているのか俺の鑑定スキルでは確認が取れない。


 身体能力強化魔法は、持っている武器や防具にまで効果を得ることはできない。

 だが刃こぼれひとつ見られないことから、耐久力が強化されているのは確実だ。

 そうでもなければ先ほどのゴーレム戦で折れるどころか、砕けていたはず。


 そういった点を考えると、ユニーク武器の中でも相当いいものなんだろうな。


「フラヴィは俺の技術を継いでいるから、"動"系統の技を使えばゴーレムでも確実に倒せるんだが、あまり使いたくないと思ってるんじゃないか?」

「ぱーぱのちからは、みんながてにいれてから、ふらびいもつかうの」

「そうか」


 満面の笑みで答えたフラヴィに、俺も頬を緩ませる。

 そう決めてるからこそ、これまで使うことがなかったんだな。

 その気持ちをとても嬉しく思う一方で、それはこの子の弱点を露にしていた。


 やはりこの子は戦闘に向かない、とても優しい心を持っている。

 誰かが危なくなった時か、俺の指示以外で使うことはないんだろうな。

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