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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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一線を画すもの

 迷宮に置かれている宝箱は赤、青、緑、銀、金の全5種類。

 ここに木箱を入れると6種類あると言われる。


 木箱の中身はそのほとんどが一般的なアイテム。

 特に回復薬と魔晶石が多い傾向があるらしい。


 続いて武器だが、これも安価で買えるものから良質なものまで手に入るようで、基本的にはユニークなどの希少なアイテムが出たりはしないと迷宮ギルド職員に聞いた。

 ここまで探索して12個は木箱を開けたが、どれも回復アイテムや武器だった。


 さて、眼前に置かれた箱の色は緑。

 木箱を金属のような煌く素材で作られたもので、縁取るように少し濃い目のグリーンが印象的な、ボス報酬箱の色違いとも言うべき豪華な宝箱だった。


「トーヤトーヤ!

 開けてみようよ!」


 高揚したエルルの声が耳に届く。

 確かに中身が気になるのは俺も同じだ。


 これまで迷宮ギルドに報告された情報から統計を取ると、青、緑、銀、金箱の順に希少価値の高いアイテムが出やすいと言われているそうだ。


 もちろんこれは、手にした冒険者の体感によるものも大きい。

 開けたら"たまたまそうだった"と言えなくもない。


 これを基準にするのもどうかとは思うが、木箱とは明らかに違う。

 ここまで豪華な箱を目の前にすれば、中身に期待するのも仕方ない。


「この箱はブランシェが見つけたんだから、ブランシェに開けてもらおうな」

「あ、そうだよね!

 ブランシェブランシェ!

 開けて開けて!」

「いいの?」


 遠慮がちに訊ねるが、ブランシェが気づかなければ俺たちは先に進んでいた。

 小部屋に来てもまず見つけられなかったものだし、こうして箱を目の前にしても匂いなんてまったく分からない。

 そういえば、狼の嗅覚は1キロ以上も先を嗅ぎ分けるって話を思い出した。

 この子ならもっと離れている位置まで認識できるようになるんだろうか。



 ブランシェを中心として左にフラヴィ、右にエルルが並ぶ。

 ゆっくりと箱を開ける姿に、俺まで胸が高鳴ってきた。


「おぉー!」

「なんかすごそうなの出た!」


 入っていたのは一振りの短剣。

 刃長30センチ、白樺で作られたような鞘と白銀の刃。

 とても美しい短剣だった。


 しかし、その名を鑑定スキルで確認すると、ある仮説が俺の頭をよぎった。

 言葉足らずではあるが、どうやら説明文にもそれがしっかりと書かれていた。



【 インヴァリデイトダガー 】

 対象が持つ特殊効果を5秒間無効化し、無属性ダメージとして相手に与える。



 ……この短剣で攻撃すれば、対象が持つ特殊な効果、つまりは強化魔法を含めたものを無効化した上に無属性攻撃判定のダメージとして通すことができるようになる、ということだ。

 効果時間は短めの5秒ではあるが、正直子供たちでも十分すぎる。


 問題は、"特殊効果"という点か。

 これがもしも身体的強化に効果範囲が留まらないのであれば、特質的な相手を斬れる凄まじい武器になる。


 詰まるところ、このダガーなら岩石で覆われた魔物だろうと、一般的な耐久力のそれらと同じように対処ができるようになるという意味を持つんだが、まさかそんな恐ろしい武器がこんな上層にあるとは思えない。


 同時に、"だからこそ隠されていた"、とも言える。


 実際に使ってみなければ判断ができない説明文だ。

 しかし、試してみる価値はある。

 むしろ俺は、そうなるとしか思えない。


 26階層ではあるが、20階層以降は詳細不明のアイテムが出るって話だし、上層でユニーク武具が出ないとは聞いていない。


 だがこれは、岩石魔物地帯の対処法として申し分のない武器だと言える。

 いや、それなら"岩切りの剣"といった名称の魔導具が手に入るはず。

 明らかにこのダガーは、岩を斬れる武具とは一線を画すものなのは確実だ。


 やはり隠されたアイテムは特殊すぎるってことで間違いなさそうだな。

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