表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
442/700

取れそうもないな

 25階層にやってくると違和感を覚えた。

 ゲートからだと魔物の気配が感じられない。


 どうやらこのフロアにも冒険者チームがいるようだな。


 しかし、これだけ潜ってもそれほど多くの冒険者と出会っていない。

 同じ南口のエントランスゲートから迷宮に入ったとしても、やはり同じ階層の別フロアが用意されてるってことなんだろうな。

 混雑を避けるためだと初めは思っていたが、これはどちらかと言えばトラブル防止を目的とした仕様なのかもしれない。


 言葉は悪いが、魔物を斬って生計を立てている者たちからすれば、荒くれるのも当然なんだろうか?

 もちろん、すべての冒険者に当てはまるわけじゃないが、わりと高確率でそういった連中と今後も鉢合わせそうな気がする。


 子供たちのために安心して休める場所で休息を取らせてあげたいところだが、そうすることでこの子たちが嫌な目に遭ってしまうのは本末転倒だ。

 かといって魔物が出現するかもしれない場所で休み続けるのも疲労感が溜まる。

 これまでの旅ではそうしてきたのが日常だったが、それが見えないストレスとして蓄積され、いつかは抱えきれなくなることだって考えられる以上、休める場所でしっかりと休ませてあげたいとは思うんだが。


「……トーヤ。

 魔物、いないね……」

「先に討伐した冒険者がこのフロアにいるんだろうな」


 300メートル先にも気配を感じないが、15階層でのこともあるからな。

 できるだけ穏便に休息が取れるといいんだが。


「ねぇ、ごしゅじん」

「なんだ?」


 俺は聞き返すが、ブランシェの言いたいことも理解してるつもりだ。

 どうやらフラヴィとエルルも同じ気持ちのようだし、大人たちからも似たような気配を軽く感じる以上、泉に立ち寄るっていう選択は取れそうもないな。


「このまま先へ進むか?

 疲れたら小部屋を探せばいいし、いざとなれば俺たちがいるからな」

「そうだね。

 あたしは先に進んでも大丈夫だけど、フラヴィは疲れてない?」

「うん、だいじょうぶ」

「ブランシェはあたしよりも元気だし、大丈夫かな?」

「アタシはぜんぜん疲れてないよー」


 笑いながら答えるブランシェだが、この子だけは疲労を感じさせないほどの体力を持ち合わせているからな。

 探索終了になった時も空腹からだし、体力的には俺と同等くらいのものを持っているんじゃないだろうか。

 落ち着いたら調べてみるのもいいな。


 ちらりと大人たちに視線を向けると、笑顔で問題ないと答えられてしまった。

 歩いているだけだから子供たちよりも疲れている、なんてことはないよな。


 俺たちは泉に寄らずに先へ進むことを決め、今後も冒険者とは距離を保つ方向で下層へ向かうことにした。

 若干トラウマに近いものを与えてしまっているようだが、すべての冒険者を避け続けるのは難しいから、ある程度は我慢してもらうしかない。


 それも度が過ぎれば俺の威圧で大人しくさせればいいだけだからな。

 いっそ明確な敵対行動を取ってくれたら楽に制圧できるんだが……。


 いや、その場合は一度エントランスに戻る必要が出てくるか。

 そうなるとまた違った問題に遭遇する可能性もあるな。


 ……まったく。

 面倒なことこの上ないな、荒くれ者ってのは。

 中途半端な言動しかしてくれないんじゃ、対処もできやしない。


 なら目を光らせながら黙らせればいいのか?


 それはそれで悪名に繋がりそうだな。

 "魔王"だの"化物"だの、冒険者に定着されるのは困る。


 正直、荒くれ者への対処法を学んでおくべきだったかもしれないな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ