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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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阿吽の呼吸

 ラットマンを問題なく倒した3人に続き、俺たちは先を進む。


 コボルトより少しだけ強い程度の魔物に後れを取ることはない子供たちは、安定した戦いを見せながら危うげもなく迷宮を歩きつづけ、22階層の獣猟犬(ハウンドドッグ)、23階層の鋭牙狼(ウルフファング)、24階層の鉤爪猫(クロウキャット)を軽々と退けた。


 子供たちが蹴散らした魔物はどれもが素早く動き回る厄介な敵で、ランクB冒険者のチームでも討伐に苦労すると聞いていたが、この子たちにはまだまだ余裕があるようだ。

 それもたったの3人で倒しきるほどの戦い方は唸るほどだった。


 これだけ多くの魔物を安全に倒していれば、少しは自惚れたりもするかと危惧していた俺はどう説明したものかと悩んだが、その兆候は今のところ感じられないようだ。


 こういったところも、俺の背中を見て育っているのかもしれない。

 そうだったら嬉しいし、そうでなくとも気をつけて行動しないといけないな。



 迷宮に来てから特に成長が著しいのは、間違いなくエルルだな。

 経験が物を言うとはいえ、これほどの数を相手取れば隙が出ても仕方はないが、この子はそれを一切思わせないほどの安定感を見せた。

 連戦ではあるが、それでも次の魔物との距離もそれなりにあるし、これまで何度も小休止を取っているからか、的確な指示を冷静に出し続けていた。


 それに遊撃のフラヴィを軸に、最前線のブランシェと後衛のエルルというチームは、たった3人でありながらも完成度が非常に高い。

 自分にできること、仲間に任せるべきことをしっかりと理解しながら行動しているからこその連携ではあるんだが、これを熟練した冒険者チームにやってみろと言ったところで、"できない"と即答されるほどの動きだった。


 まさに阿吽の呼吸。

 気心の知れた仲だけでなく、姉妹としての強い信頼関係からくる彼女たちの連携は、見事としか言いようがない。

 俺との模擬戦を繰り返してきたことが、十分に活きているな。


 人を遥かに上回る身体能力を持つ魔物が、人の姿を取ったことで可能とした凄まじい力のひとつだとは思うが、ピングイーンはもちろん、最強種と言われるフェンリルだろうとこれほどの強さを出せるとは想像すらしていなかった。


 もしも魔物の姿のままのふたりを連れていれば、迷宮の歩き方すら変わっていたことは確実だが、少なくとも俺がごり押しをして進まなければ下層へは到達できないかもしれない。



 当然、まだまだ拙い部分もあるし、改善すべき点も多い。

 だがこの子たちは、世間一般で幼いと言われるほどの子供だ。

 それもフラヴィとブランシェは生まれて半年すら経っていない。


 そんな幼さでランクA冒険者を超える強さを見せるこの子たちでも、教えるべきことは数え切れないほど多い。


 何よりも、ブランシェとエルルはまだ"静"と"動"の初期技も使えない。

 本格的な修練を集中して続けるには、人の気配が相当少なくなる場所に行かなければならないから、俺の予想では60階層辺りにまで潜れば十分だと思っていた。


 徐々に魔物が強くなるとはいえ、この階層では子供たちの修練すらできない。

 このペースでいけば今日中に30階層手前まで進めるから、順調に行けばあと2日で50階層をクリアできそうだな。


 ……何事もなければ、ではあるんだが。

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