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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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頭角を表す可能性も

 報酬の赤箱を開けた俺たちは、そのまま21階層へ向かった。

 少しだけ空気に濃密な気配を帯びているこの場所は、19階層よりも強い魔物が歩いているようだな。

 察するところ相手はコボルトだから、ゴブリンより少し危険ってだけだが。



 ミノタウロス討伐報酬の宝箱には回復薬・中と疲労回復薬・小が人数分、5センチほどの魔晶石が20個入っていた。


 ヒュージゴブリンの報酬から考えると、10万ベルツくらいにはなるだろうか。

 もしかしたらもっと少ないかもしれないが、こればかりは受付に提出しなければ分からないから、確かめるのは相当先になる。


 危険なのは豪腕から繰り出される斧と突進だけだからな。

 それほど高い報酬は得られないんだろうとは思うが。


 そもそも遠距離から一方的に攻撃ができる点を考慮すれば、突進さえ気をつけていれば初心者でも倒せる強さだったとも言えるから、パーティー編成と連携さえしっかり取れるなら敵にはならないと俺には思える相手だった。


 それでもこの世界の住人が倒すのには苦労してるんだろうな。

 そこは俺の知るところでもないし、手助けするつもりもないが。



 心なしか、迷宮の壁が薄暗く見えるのは気のせいじゃないな。

 10階層ごとに変わっていくのか、それともここから徐々に変化しているのか。

 気になるところではあるが、壁に埋め込まれているような明かりがある以上、見通しは非常にいい。


 それにしても、魔物の数が増えている。

 まるでチームを組んでいるかのような配置だが、これまでとは違って次の魔物との距離が極端に近い連中が出てきたようだな。


 倒すのにもたつけば、後続と合流されて厄介になる。

 最悪の場合、戦闘中に応援を求める連中が出てくるかもしれないな。

 今のところ4~5匹が1セットみたいだし、合流してもまだ10匹程度だ。

 これくらいの数なら子供たちでも蹴散らせるだけの余裕はあるが、それも今に限っての話になっていくんだろうかと危機感が募る。


 7体以上の強い魔物との戦闘を経験させるにはまだ早いが、将来的には多数の敵と対峙した時にも冷静に対処して倒しきるような強さを手に入れてくれるのが理想だな。


 ……気配を消すような敵も気配が読めない敵も、今のところは見かけない。

 ブランディーヌが警告してくれた存在がダンジョンにいないとは限らないし、できるだけ慎重に行動する分には問題ないだろう。



 続く22階層は、俺も初めて見る魔物と遭遇した。

 二足歩行するねずみの魔物で、体長は140センチほどあるようだ。


 その手に武器らしい武器は持っていない。

 だが、それが意味するのはひとつだろうな。


「ねね、トーヤ。

 あれ、何の魔物なのかな?」

「あれはラットマンだな。

 俺も実物を見るのは初めてだ」

「ふむ。

 武器を持っていないようだが?」

「それが意味するものは何か、分かるか?」


 おそらくリーゼルだけは経験と知識から知っているだろう。

 本音を言えば俺も話に聞いた程度で、正解なんて持ち合わせていない。

 しかし体つきや姿勢からおおよそは察することができる。


 顎に右手の人差し指をあてたエルルは、悩みつつも答えた。


「んー……。

 あの体は腕力や脚力がありそうだよね。

 武器を持っていないんじゃなくて、持つ必要がないってことなんじゃない?

 たとえば殴ったり蹴ったり、体当たりなんかで攻撃をしたり、隠れていそうな爪で襲ってくるかもしれないから、そういったところには気をつけるべきなんじゃないかなって、あたしは思うよ。

 ねずみの特徴が色濃く表れてるなら前歯で噛み付いてきたりするだろうし、とりあえず色んな攻撃をしてくると思って戦わないと危ないかも。

 それと、これまでの魔物にはいなかったけど、"魔法を使ってこない"と考えないほうがいいと思うから、急に飛んできても対処できるように警戒するべきかな」


 いい答えだ。

 エルルの洞察力がしっかりしてきたな。


 知識だけならフラヴィも劣らないが、指示を出すには不向きな性格だ。

 パーティーにはエルルのような後方で見守るリーダーが必ず必要になる。

 いずれはリージェやレヴィア以上の頭角を表す可能性もあると思えた。


 今後の成長が楽しみなのはフラヴィとブランシェも変わらないが、本当に鍛え甲斐のある生徒たちだな。

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