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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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本質的な意味が

 重々しい音を上げながら扉が閉じ、20階層のボスが現れた。


 2メートルは軽くあるだろう巨体と、巨大な両刃の斧を右手に持つ魔物。

 黒い体毛に覆われ、黄色に怪しく光る瞳、緩やかな曲線を描く漆黒の角を頭に2本生やしたその二足歩行する牛の姿は、ヒュージゴブリンと比べるまでもなく一線を画すほどの気配を纏っていた。


 ミノタウロス。

 20階層の守護者とも言うべき魔物だ。


 見た目からいって、あの膨れ上がった筋肉から繰り出される斧は厄介だ。

 一撃ですべての優勢を覆すほどの威力を持つのは確定だろう。


 問題は子供たちが避けられるのか、などではない。

 あんな鈍重極まる無骨な斧を振り回したところで当たるとは思えない。

 攻撃が当たらなければその時点で負けになると以前ブランシェに話したが、それは何もこちらに限っての話ではないからな。


 むしろ斧よりも危険なのは、突発的に行動した際の突進だろうな。

 油断やタイミング次第では重量を感じさせる武器よりも体重を乗せたまま攻撃するほうがよっぽど効率的だし、何よりもあれだけの体格を活かされると回避するのも難しくなる。


 突進は真っ直ぐに進むとは限らず、ある程度方向を変えることができる。

 それがどれだけ危険で厄介なのかは言い聞かせてあるし、体術で襲い掛かってくる可能性も考えられることも伝えてあるから子供たちだけで倒せるはずだ。


 2メートルの身長を超える斧も、振り回せば相当の範囲まで攻撃が届く。

 背後は確かに安全だが、気配察知を教えた時点でそれが通用しない相手の話もこれまでしてきたし、冷静に対処ができれば()程度で止められる子供たちじゃない。


 だからといって油断は禁物だ。

 それについてもしっかりと教え込んだが、元々フラヴィもエルルも必要以上に敵と戦おうとは思っていない。

 修練のために戦っているのと戦闘が好きだから戦うのは、本質的な意味が違う。

 そんなふたりならば冷静に相手を見極めているはずだ。


 むしろ危険なのはブランシェか。

 どうにもこの子は成長のたびに気性が激しくなっている気がする。

 これも母親の血筋を色濃く受け継いでいるからなんだろうな。


 決して悪いことではないんだが、できるなら護るための戦いを優先してほしいと思ってしまうのは、俺のわがままだな。 


「さて、どうする?」

「トーヤたちは見てて。

 あたしたちだけで頑張る!

 ふたりとも、いける?」

「うんっ」

「おー!」

「じゃあ、作戦通りに行くよ!」


 気合の入ったエルルの言葉に3人は飛び出す。

 ブランシェ、フラヴィ、エルルと、いつもの陣形だな。


 今回は俺たちもサポート待機だ。

 危険になればリージェとレヴィアの防御魔法か、俺が一気に距離を詰めて一撃を防ぎ、リーゼルはその場を動かずに周囲警戒をしてもらう。


 もっとも、この場所は一度入ってしまえば誰も入って来れないからな。

 先人も退室しなければ入室も不可能な創りだから、ある意味では安全な場所か。


 さすがに長時間居座れば追い出されるように階層の入り口へ飛ばされる。

 たとえボスを倒さずに遠目で見続けていても変わらないらしいな。

 このフロアを拠点として使うことはできないみたいだが、こんなことを試したやつがいるんだろうなと思わず感心してしまった。


 正直、俺には想像すらしていなかった。

 ここに居座れば待機している冒険者に迷惑がかかる。

 ある意味では降りれば降りるほど試したくなる手段ではあるか。


 敵との距離を10メートルまで縮めると、こちらに気がついたようだ。

 相手がミノタウロスなら、今回の戦闘でこの子たちの成長が見られそうだな。


 さて、冷静に対処ができるか。

 何よりも危なげなく戦い終えるか。


 それ次第で今後の教育方針を変えることになりそうだ。

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