一点集中型
草原にひとり座るフラヴィは考える。
どうすれば良かったのか。
どうしたら正解だったのか。
ブランシェやエルルのように、怒ることが正しかったのか。
それとも慕う父や姉たちのように、冷静でいることが正しかったのか。
幼い少女は、ひとり考え続ける。
けれど、答えを出すにはまだ子供で。
思考も満足に定まらなくて……。
まるで助けを求めるように、少女は父を探す。
ぽつねんと座る幼い子の名を父が呼ぶ。
振り返ると大好きな父が右手を伸ばしていた。
けれど、顔がよく見えない。
見上げても、大好きな優しい父の顔がよく見えなかった。
父を慕う少女は、とても小さな手を伸ばした。
* *
「フラヴィ、フラヴィ」
「……んぅ……」
のそりと俺の胸から起き上がるフラヴィ。
外側に軽く跳ねた寝癖を丁寧に直しながら、俺は朝の挨拶をする。
「おはよう、フラヴィ。
そろそろ朝食だよ」
「……うん……おはよ、ぱーぱ……」
寝ぼけ眼でフラヴィは答えた。
……この子は昨日も寝つきが悪かった。
慣れない迷宮の中でもあったし、俺の胸で何かを考え続けていたようだ。
想いを内に秘めることもよく似ているが、溜め込みすぎても体に毒だ。
続くようなら一度宿に戻って、しっかりと休息を取ったほうがいいだろうな。
やはり、この子がいちばん年齢相応だ。
俺としては安心できるんだが、あまり心労が続くと倒れてしまう。
今後も注意が必要だな。
朝食の準備を済ませ、みんなで食事を取る。
その頃になるとフラヴィはいつもの元気な姿を見せてくれて、美味しそうにパンを頬張っていた。
昨日は随分と頑張っていたからな。
今日はのんびりと迷宮を進むか。
しかし、大人たちに攻略を任せるとなると少し問題だ。
リーゼルは巧みに技術を使って進むが、リージェとレヴィアに関しては大味だ。
言葉通りの意味で魔物を蹴散らしながら先を目指すことは目に見えている。
いや、すべてを筋力で叩き潰すレヴィアよりは、リージェのほうがまだマシか。
対象の視界を遮る魔法サンドブラストや、岩で作り出した魔法盾ロックシールドなど、この世界でも一般的と言われている土属性魔法を次々と体得する彼女の成長は目を見張るものがあるし、それらを使う彼女の手腕もおおむね悪くない。
……が、それらはあくまでも補助魔法に限っての話になる。
土属性の初級攻撃魔法とされるストーンショット。
文字通り石の弾を対象に打ちつける魔法になるが、その威力は笑えなかった。
恐らくだが、石どころか鉄球のような硬度を銃弾の速度で飛ばしてしまう彼女の攻撃魔法は、本物のライフル級どころの威力では済まないんじゃないだろうかと俺には思えてならない。
試しに岩へ向かって撃ってもらったが、厚さ1メートルはあった巨岩を軽々と貫き、20メートルも後方に生えていた木に穴を開けていた。
岩には威力を物語る亀裂の一切が見られず、まるでレーザー兵器を連想するような魔力一点集中型の威力は、間違いなく強すぎるとしか言いようがなかった。
こんなもの、強靭なドラゴンの鱗でさえ貫くんじゃないだろうか。
冗談ではなく本気でそう思えるほどの凄まじい威力を叩き出した彼女の攻撃魔法を見て、俺たちが無言で立ち尽くしたのは言うまでもない。
 




