特殊なスキル扱い
予約掲載設定が19日になっていました。
大変申し訳ございませんでした。
鑑定結果によるとエルルが持っていた石は、黒鉄鉱石と出ていた。
鉄分を多く含んだ、いわゆる磁鉄鉱なのかは専門家じゃない俺には答えられないが、もしそうだとすると良質な武器を作るための素材になるかもしれないな。
これまで多くのゴブリンを倒してきたが、見たことがないものだ。
この石は初めてのレアドロップ品と判断してもいいんだろうか。
「リーゼルはこれについてどう思う?」
「形状や色から判断すると、黒鉄鉱石でしょうか。
ゴブリンが落としたとは聞いたことがありませんが、稀に落とすドロップ品なのかもしれませんね」
リーゼルの答えに喜ぶ3人だが、話から察すると他の魔物も落とすみたいだな。
まぁ水を差す必要もないし、あれだけ喜んでるところは見ていて微笑ましいから、素直にいい物を拾ったと考えよう。
* *
迷宮15階層に来て、大きな変化を感じた。
本来いるはずの魔物がまったく見当たらない。
これはそういった意味を持つんだろうな。
「ふむ。
魔物がいないな」
「これだけ歩いてもいないって、ボスの部屋があるの? ごしゅじん」
「いや、おそらく先に来た冒険者がこの階層にいるんだ。
……正確にはこの先にいるんだろうな」
魔物はそう短時間で再出現しないってことみたいだな。
ここからさらに下層は違うかもしれないが、少なくとも冒険者の先に進まなければ魔物とは遭えないか。
だがパターン通りなら、この階層に出現するのはゴブリンになるはず。
こんな上層で修練をしているとは思えないから、泉で休息してるんだな。
正直、これまで冒険者と出会わなかったことのほうが珍しいんだろうし、難易度の高い階層ならゲートを進むまで一時的に協力して進むこともできる。
1パーティーだけじゃなく、2つ以上のチームと組むこともいい経験になる。
立ち回りや周囲の警戒も随分と変わってくるし、巧く連携を取れるようになれば安全性が確実に増す。
しかし相性が悪い場合は、その逆もありうる。
ここが2パーティー以上で戦闘することの難しさだろうな。
特に遠距離支援が多い場合、かえって危険になりかねないこともある。
そういった意味では、多数の冒険者に冷静かつ正確な指示を出せるリーダーが必要になるから、我の強いやつがひとりでもいると生存率も下がってしまう。
ダンジョンの最奥を目指している"攻略組"が、サポートメンバーの編成を変え続けている理由のひとつだろうな。
まぁ、俺たちには関係のないことだ。
他のチームと協力しなければ先に進めないなら、その時点で手に余る。
こちらの手の内を見せるわけにもいかないし、一度でも仲間として行動を共にすれば同行者が悪党に狙われかねない。
必要以上の接触は避けるべきだ。
「……いたぞ。
2時方向、300メートル先に6名の冒険者がいる。
動いていないところを見ると、泉で休憩してるんだろうな」
「……すごい、また効果範囲が伸びてる……。
どうしてこんな短期間にぐんぐん伸ばせるの?」
「こればかりは修練あるのみだな。
俺は気配察知を長時間張り巡らせられるから、みんなよりも成長が早いんだよ」
ユニークスキルの"習得速度上昇Ⅰ"を持っているが、日本で修練していた頃と成長が変わらないように思えるから、気配察知は他のものとは違って特殊なスキル扱いなのかもしれない。
俺が使う生物の気配を読み取る能力は、ゲームのように少しずつ多くの経験を積まなければ距離が伸ばせないものではない。
使えば使うだけ成長するものではあるが、逆に言えばそれだけ長い時間を使い続けなければ効果を高められないスキルだと言える。
それも最大効果範囲を索敵し続ける必要があるから、今の子供たちには難しく感じるのも当然だと思う。
技術面で俺の技術を継いでいるフラヴィは修練法やコツなんかも知っているはずだが、経験が少ないこともあって効果範囲の拡大にそれほど変化はない。
幸い持続時間もふたりと同等だから、差が開きすぎるってことはないだろう。
特に今は戦闘をしながらの修練になっているし、子供には難しい技術だ。
だが3人の索敵効果範囲は、すでに120メートルを超えている。
本音を言えばもっと遠くまで見られると安心できるが、最低ラインは到達した。
あとは距離を伸ばすことよりも、精度を上げていくことを優先すればいい。
しかし今の子供たちは、現段階でディートリヒたちを超えているはずだ。
使い続ければ成長するとは言っても、指導者がいないことに大きな差が出る。
4人で切磋琢磨しても限界があるだろうから、その点は申し訳なく思うが。
……再会したら一度確認しないと、粗だらけになってるだろうな。




