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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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目視での確認を

 ゲートの先は開けた空間となっているようだ。

 正面奥にはボス部屋へ行くための大きな扉が見える。

 見上げてしまうほどの巨大さに仰々しく思えるが、これまで遭遇した魔物を思い起こすと、どうにも拍子抜けする。


 冒険者の姿はなかったが、やはり俺の推察通りパーティーメンバーの多さでごり押しして進み、クリアすると再戦に戻ることはないのかもしれないな。


 まぁ、余所のパーティーを心配する前にやるべきことがある。

 こちらはこちらの都合でダンジョンを進ませてもらうか。


「ここが10階層か」

「おっきいとびらなの」

「ほんとだねー」

「5メートルくらいありそうだけど、あんなの重くて開けられないんじゃない?」

「触れると勝手に開く仕掛けなのかもしれないぞ。

 リーゼルは何か知ってるか?」


 視線が集まる彼女は、どこか申し訳なく答えた。


「すみません、私は5階層で戻っていますので、分からないんです」

「いや、謝ることはないよ。

 ソロじゃ悪目立ちするし、迷宮を体験するなら5階層でも十分だからな」


 ここまではそれほど魅力的な場所だとは思えなかった。

 道中で木製の宝箱をひとつ見つけたが、とても小さな魔晶石が数個と普通のダガー1本しか手に入らなかったし、本当に初心者用の場所なんだなと考えを改めさせられていた。


 まぁ、子供たちは楽しそうに木箱を開けていたし、入手したものにも喜んでいたから、それでいいんだけどな。


「この先にボスとやらがいるみたいだな。

 子供たちだけに任せてみるのか?」

「それも魔物次第だろうな。

 俺としては3人でどこまで行けるのかは興味が尽きないが、少しでも危ないと判断すればみんなで倒そうと思うよ」

「そうですね。

 いつでも戦えますので、その判断はトーヤさんにお任せします」

「今までの流れから察すると、それほど強い魔物が出るとも思えませんし、まずは目視での確認をしてから決めますか?」

「そうだな。

 いきなり襲い掛かってくることはないらしいから、リーゼルの案でいこうか」


 こういったところも安全に攻略ができると言えるだろうな。

 その先は分からないが、少なくとも現在の"攻略組"がクリアした80階層も同じような仕様だと報告されているそうだ。


 彼らは魔物の数や種類、探索した迷宮の構造、ボスの詳細やドロップ品などの情報を惜しみなく無料で公開していると聞いた。

 その姿勢から想像するリーダーの人物像は、複数のパーティーでダンジョンを攻略しようとしているように思えてならなかった。


 80階層ともなればそれだけの危険が伴うことはもちろんだが、どうにも"俺に続け"と意思を示しているようにも感じてしまう。

 恐らく彼は、本気でこの迷宮を攻略しようと考えているんだろうな。


 俺がもしソロで、それもこんな厄介な案件を抱えていなければ一度は逢ってみたいと思う反面、非常に面倒なことになりかねない勧誘を受け続けるのではないかと危機感を募らせるが、潜在的な強さを感じさせればイチから鍛えてくれる点を加味すれば、指導者に向いているとも思えた。


 いや、どちらかと言えば"迷宮に魅入られた男"、と言ったほうが正しいか。

 そういった連中が多くいるとも聞くし、それは決して悪いことではないんだが、ダンジョン攻略のために地下へ潜り続けることは相応の精神力が必要になる。


 俺としてはある程度潜ったら太陽を浴びに戻りたいと思えてしまうが、その辺りの精神面も"攻略のプロ"ならわきまえているんだろうな。


 色々な意味で興味の尽きない男だな、"攻略組"のリーダーは。


 どの道、俺たちと遭遇すれば面倒なことになりかねないから、できるだけエントランスホールに戻る機会は減らしたほうがいいかもしれない。


「ごしゅじん! 早く早く!」

「焦るな焦るな。

 やる気があるのはいいことだが、興味本位が強すぎると回りが見えなくなるぞ」

「でもでも!

 この先にすんごいのがいるんでしょ!?」

「分かった分かった。

 それじゃ進むから、いきなり突っ込んだり魔法をぶっ放したりしないように」


 俺の言葉にこくこくと首を縦に振るが、好奇心で瞳がきらっきらしてるな。

 フラヴィも落ち着いているようでそわそわしてるみたいだし、初めてのボス戦に期待が高まるのも無理はない。


 鍛えてきた自分の力がどれだけ通用するのかもまだ分かっていない段階だろうから、そういった気持ちになるのも当然だろうし、俺にもそんな時期があった。


 思わず幼い自分と重ねてしまう子供たちに頬を緩ませながら、俺はボスが待ち受ける部屋の巨大な扉に手を触れた。

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