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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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勘違いしてるんじゃ

 ダンジョンの構造は10階層ごとにボス部屋が設けられ、倒すと報酬が入った宝箱が置かれている場所に進める。

 1階層だけ特殊な造りで、他の冒険者、ここでは探索者とも呼ばれているそうだが、自分たち以外のパーティーと会うことは極端に少ないらしい。

 どうやら違った場所に飛ばされてるみたいだな。


 移動には"ゲート"と呼ばれている光の柱に入ることで先へ進める。

 どこか空の色にも思える淡い青色で円筒状の光が天井まで伸び、わずかに輝く光の粒子が空へ溶け込むようにゆっくりと昇っては消えていた。

 想像はしていたが、実際にこの目で見ることになるとは思ってなかった光景だ。


 薄青に光る柱は先へ進むための道で、薄緑色はこのフロアに出るらしい。

 間違えると戻る羽目になるが、途中から攻略を再開できるので不便は感じない。


 このフロアにある光の柱に入ると、初心者は1階層へ進む道に。

 経験者はこれまで到達した階層を自由に移動できるらしい。


 ゲームによくあるパーティー編成のような設定は必要としないで、自分たちの都合によって自由に階層を行き来できるらしいが、ここに赤の他人が入ろうとしても制限がかかる。

 一度もその階層に足を踏み入れたことがない者も同行できないようだ。


 これが連絡用魔導具を入手でき難くしている要因で、同時に救済措置でもある。

 この世界の住人には気がついていないかもしれないが、仕様にも思えるこれは本人の実力以上の場所に到達できないようになっているんだろう。


 迷宮内では命のやり取りをすることになる。

 それは町の外にいる魔物を倒す行為と同じではあるが、ダンジョンや魔晶石、ボス部屋や報酬、道中にある宝箱、脱出用のアイテムやゲートなど、俺にはゲーム内の世界を連想してしまう。

 逆に言えば、ゲームを知っているからそう思えるだけで、この世界の住人からすれば当たり前の光景になっているんじゃないだろうか。


 それはつまるところ、自覚せずにゲームを遊ぶような感覚で迷宮を攻略しているのではと思えてならない。


 危機感の足りない行動を取り続ければどうなるかを知らずにダンジョンを進めば、いずれは手痛い目に遭うだろう。

 説明をしてくれている職員もそうだが、どこか迷宮の認識を勘違いをしてるんじゃないかと思えてしまうが、これはあくまでも俺個人の見解として胸に納めるほうがいいだろうな。

 そもそも、ダンジョンに足を踏み入れてもいない俺が言葉にするのは間違いだ。


 先ほどから、こちらにちらちらと視線を向ける冒険者たち。

 やはり子供連れともなれば場違いなのは理解できるが、あまり好感は持てない。


 まぁ、そのほとんどが注意するべきか悩んでるって気配みたいだし、職員の女性は何も言ってこないから、必要以上に気にすることもないか。

 稀ではあるが、子供にダンジョンを体験させたいと考える親もいるんだろうか。



 ダンジョン内で見つけた宝箱にも等級があるらしく、箱の色で希少なアイテムが出やすいと言われているそうだ。

 これに関しては正確な情報ではなく、ある種の体感でそう思えただけだろうな。

 念のため聞いてみたが、宝箱に罠が仕掛けられていることは、これまで一度も報告されていないそうだ。


「木箱を除き、赤、青、緑、銀、金の全5種類。

 赤い箱のみボスを攻略後の報酬箱となっていて、それ以外は順に希少度が上がると報告されています。

 20階層以降は詳細不明の"黒いアイテム"が出ますので、こちらにお持ちいただければ専門の者が解呪をさせていただきます」


 これは恐らく未鑑定品として入手するものの類で、いわゆる鑑定をすることでどんなものなのかを判別することができるんだろう。

 形状はそのままで、真っ黒なアイテムを連想させる女性職員の言葉は、まるで呪われたアイテムのようだと思えてしまった。


 ここにきてようやく日の目を見そうなスキルを思い浮かべながら、"開拓組"と呼ばれた最下層を攻略している凄腕冒険者たちの話を聞いた。

 どうやら彼らは現在83階層を攻略中らしく、今日明日中にも吉報が届けられそうだと女性は嬉しそうに言葉にした。


 それとなく聞いてみたが、フロアやボスを攻略したからといって誰かに伝わるような仕組みにはなっていないようで、完全な自己申告制となっているみたいだ。


 "誰々が何階層を攻略しました"なんてアナウンスをされた日には、人の目が気になってまともにこのエリアを歩けなくなるからな。


 そんな仕様じゃなくて、本当に良かったと思う。

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