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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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憧れた情景

 長い階段を下りた先はとても広い空間が設けられ、そこには地下でありながらもまるでひとつの町が造られているように思えるほど多くの店が並ぶ。


 その中でも一際目立つ宿屋と素材屋、料理店が何軒も立ち並び、ひしめくように大勢の冒険者で溢れていた。

 推察になるが、長いことダンジョンに潜っていた者たちなんだろうな。

 その楽しげに酒をかっ食らう姿は小説に書かれた冒険者に思えてならなかった。


 談笑し、時には攻略の話をしながら食事をつまむ。

 新しい武器を手に取り、防具を試着する。

 入手した物を売買し、疲れを癒すために宿へ向かう。


 一度は憧れた情景が、そこにはあった。


 "自由"

 その言葉がいちばんしっくりくる。

 そんなことを考えながら、迷宮に入るための準備と諸注意について担当者から説明を受けていた。



「――以上がダンジョンでの基本事項となります。

 何かご質問やご不明な点はございますか?」

「おおよそ迷宮がどういった場所なのかは理解できた。

 聞きたいのは冒険者同士での禁止事項など、注意するべき点か。

 誰かが戦っている魔物を横取りする行為が良くないことや、冒険者に襲い掛かるような非道が論外なことくらいは理解しているつもりだ。

 しかし噂では、ボス部屋の前で陣取るように連戦を繰り返している者たちがいると聞いた。

 そういった場合の対処法などがあれば、教えてもらえるだろうか」


 俺は女性職員に訊ねるが、到達した順に攻略の機会が与えられる、というのがここでのルールのようだ。

 つまりはボス部屋の前に着いた時点から並ぶことになるらしく、もしもそれを断固として拒否したりすれば、先ほどもらった特殊なカードに相手の情報と事の詳細が記載されると女性は話した。

 これは禁止事項に抵触した場合に限ってになるみたいだな。


「その場合はお渡ししたカードをこちらにお持ちいただければ確認できますので、同時に問題の冒険者へのペナルティーが加算されることになります。

 3度違反を繰り返すとひと月のダンジョン進入禁止、さらに3度違反をすると2ヶ月、次は3ヶ月、4ヶ月と徐々に重くなっていきます。

 これは我々"迷宮ギルド"が定めた法ではなく、ダンジョン自体の規則と思っていただいて差し支えありません」


 ……なるほど。

 ここでも、人ではない何ものかの介入を考えてしまう。


 違反を繰り返してもひと月ずつの罰則とは随分優しいと思えてしまうが、それも限度によりけりらしく、人を傷つける行為やそれ以上のことをしてしまうと、迷宮に来る者たちをサポートしてくれているギルドの者たちだけではなく、バウムガルテン冒険者ギルドが動く事態となるそうだ。


 この辺りは想像に難くない。

 人に危害を加える行為はそもそも世界の法に触れる。

 迷宮内で起こった事件だろうと、この国の法に抵触する行為と見なされるのも当然だろうな。


 だが職員の女性曰く、"自由"を履き違えた者も多いそうだ。

 その点はやはりと言うべきなのかもしれない。

 どこの世界にも勉強足らずどころか、常識をないがしろにして我を通すことを自由と考える連中はいなくならないみたいだな。


 女性の表情から、随分と苦労しているのが手に取るように理解できた。

 荒事となる場合も少なくはないそうで、バウムガルテン憲兵が巡回するらしい。

 気をつけないと酒瓶や椅子が飛んでくることもあるそうで、流れ弾に当たって教会に運び込まれるケースも報告されているそうだ。


 "酔っ払いには近付くな"、か。

 本当にその言葉通りのようだな。

 ……彼らも被害に遭ったことがあるんだろうか。


 そんなことを何となく考えながら、俺はギルド職員の女性から話を聞いていた。

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