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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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着かないはずだ

「……そりゃ、中々着かないはずだ……」


 空を見上げるように、俺は言葉にした。

 その原因となる大樹が天に向かって聳えている。


 さすが異世界、と言うべきだろうか。

 地球上では絶対に存在しないであろう巨大な姿に、ため息しか出なかった。


 全長どころか、幹の円周ですら分からない。

 これじゃ本当に"世界樹"と呼ばれても、疑いすらしないだろう。


「……わぁ、おおきい……」

「……とても不思議な樹……。

 何かこう、普通の木々とは違った感じがあるような……」


 エルルの感覚もまんざら間違いではないかもしれない。

 これだけ巨大な大樹ともなれば、精霊のひとりくらいは住んでいるんじゃないだろうかとすら思えた。

 それほどまでに立派で、どこか神々しさすら感じてしまう樹だった。


 元々日本人は、物を大切にしようとする文化が根付いている。

 これほどまでの大樹ともなれば信仰の対象にもなりやすいし、実際に精霊や神などが住まうとしても何ら不思議ではないと思えた。


 本音を言えば地球はもちろん、異世界であろうと神や精霊が実在するとは思えないが、それも存在証明がされていないだけで、それが確固たる証拠としていないと結論付けられたわけでもない。

 だからといって、"いる"と断言するやつは、ただの妄信者にしか思えないが。


 迷宮への入り口は探すまでもなく、人々の行き交う先にあるようだな。

 大樹を抉った場所を降りて行くことはないみたいで安心したが、ここまで来るとさすがに人の往来はかなり増えるようだ。

 こんな夕方頃からダンジョンに潜るやつは少ないと思っていたが、どうやらあえて時間帯を外して迷宮へ向かう冒険者も多いのだとか。

 そんなところも、迷宮と共に暮らすこの町ならではなのかもしれないな。



 大樹を避けるように造られた白い回廊。

 回り込みながら地下へと向かえる階段で、大樹の大きさに合わせられたと感じるほどの巨大さだった。

 丁寧に手入れが行き届いた造りに歳月を感じさせないが、これも何か頑丈な石材が使われているんだろうか。


 それよりも、階段とこちらにしか人が行き来していない点に違和感を覚える。

 もしやと思ったその感覚は、どうやら間違いではなかったようだな。

 考えていたのを察したかのように、リーゼルはそれについて答えてくれた。


「まるで宮殿にも思える美しさを感じるこの場所は、いわゆる南口にあたります。

 町の東西南北にダンジョンへと向かえる階段は用意され、それぞれ螺旋状に造られた別の入り口になっているんですよ」

「別の入り口?

 ってことはさ、他のダンジョンに通じてるってことなの、リーゼル姉?」


 エルルの考えは一般的なものに思えた。

 まさか4つのダンジョンが存在するって意味なのか?

 それとも入り口が違うだけで、迷宮自体はひとつなんだろうか。


 どうやら答えは後者のようだ。


 ダンジョンに行ける入り口は4つだが、それぞれ違う場所に降りるらしい。

 飛ばされると言ったほうが正しくも思えるが、実際に同じダンジョン内から他国にある別の迷宮に行くことはないと言われている。

 つまり、脱出時は入った迷宮の入り口に出る、ということだな。


 とはいえ、南口から降りたとしても、別の位置に移動させられるようだ。

 内部は地図作成(マッピング)されているらしいので、初期位置のどこかに降り立つみたいだが、それ以上詳しい話は彼女も聞いていないそうだ。

 思えばリーゼル自身も数度しかダンジョンに潜ったことはないから、詳細に関しては専門に置かれた職員に訊ねたほうがいいと彼女は答えた。


 リーゼルの話から察するところ、どうやらこれはワープさせられるみたいだな。

 同じ階層の違う場所に出るそうだが、そこに難易度や目指す下層に繋がる階段の位置が変わるわけではなく、どちらかと言えば人混みを避けることを目的に造られた仕掛けに思えた。

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