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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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あくまでも穏便に

 俺が口を挟むべきじゃないが、何よりも彼女の実力は知っているつもりだ。

 それほどの強さを感じさせるし、そうでなければあれほど巧みに気配を消すことはできない。


 尾行なんて俺の専門外だし、彼女を超える適任者は他にいないだろうな。


《さて、顔合わせも終わったことだし、今後の予定について話をするね。

 あくまでも交渉の席を設けるのは1ヵ月後とさせてもらうよ。

 これに関しては、あらゆる手段を使ってでも時間を稼ぐ用意がある。

 ヴァイス殿はその暇を自由に使い、対策と準備を可能な限り進めてほしい。

 対話用の魔導具を渡すので経過報告を適宜受ける形になるが、男の出方を見極めた上で方針を大きく変更する可能性があることも留意しておいてね。

 交渉の場にはリーゼルさんも同席してもらうつもりだけど、どうだろうか?》


「分かりました」


 リーゼルは一言で答えたが、これは馬車での移動中に聞いていたことだ。

 元々彼女はそのつもりで行動を共にしていたし、子供たちとも仲良くなってくれているから、俺としては1階にある飲食スペースでみんなと待機してもらえたらと思っていたが、残念ながらリーゼルの意思は固いようだった。


 本音を言えば、関わらないで欲しいと思っていた。

 この一件で彼女の家族が狙われることも考えられる。

 俺とは違い、リーゼルの家族は商国にいる商人だ。

 偽名を使ってるとはいえ、調べればバレるかもしれない。


 しかし、これも俺が口を出すことはできない。

 そんなこと、彼女は百も承知の上で俺たちに協力してくれている。


 彼女の意思を尊重したいし、何よりもここは自由の国だからな。

 リーゼルがそうしたいと強く思うなら、俺が何かを言うのは間違いだ。


《ギルドが取る貴族への対応は、あくまでも穏便に行動をする姿勢でいくよ。

 まずは指輪を返し、ルーナが向こうの出方を監視する。

 そのままバウムガルテンの外へ出ようとすれば全員を直ちに拘束。

 暗殺者と直接的な繋がりを持とうとすれば彼女がギルドに報告。

 拠点が判明した場合は大規模な討伐隊を編成して一挙に撲滅を図る。

 可能な限り情報を入手するために、自害を阻止できるヴァイス殿の協力が必要不可欠となるが、これについては是非お力添えをお願いしたい。

 最終的にヴァイス殿へ暗殺者が向けられるように調整することになるが、本当にそんな危険な手段でいいのかい?

 本来ならば我々ギルドが被るべき厄介事なんだ。

 今なら十分に策を変えられるが……》


 その言葉に嬉しく思う。

 俺だけでなく、子供たちの心配をしてくれているんだろう。


 だが、俺はもう腹を括っている。

 どの道、俺が指輪を所持していた事実を男が知れば狙うような相手だろう。

 まだ会ってもいないが、それをどこか確信している。

 まず間違いなく、"指輪を拾った者"を消そうと画策するだろう。


 もう遅いんだ。

 俺がこいつを手にした時点で、すべてが決まっていた。

 そうとしか俺には思えなかった。


「ご心配に深謝します。

 ですがそのための準備を続けてきました。

 幸い、さらにお時間をいただけますので、迷宮にて技術を高めます。

 必ずご期待に沿えるよう、暗殺者を確実に捕縛します」


 迷宮に潜り続ければ、ある意味では安全かもしれない。

 どういった場所かは話に聞いただけだから、この目で直に見てから判断するべきだが、町の外よりもダンジョン内のほうがあらゆる意味で都合がいい。


 できるなら、相手をするのも一般人の少ない迷宮内がいいだろう。

 戦う場所も広いほうがいいし、足場が悪い場所を選ばなければ子供たちに危害を加えられる前に潰せる。


 それもすべては男の出方次第になる。

 ここまで振り回し続けているようなやつが、まともな神経を持つとは思えない。


 心を掻き乱される可能性が非常に高い相手だろうな。

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