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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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少し神経質に

 根が悪いやつじゃないことくらいは分かっていたが、毒事件で慌しかったことに加え、死角から周囲を探っていれば悪い印象を持たれても仕方がないと、彼女も理解しているだろう。

 それでも面と向かって謝罪できたことはありがたかった。


 だがどうにも印象とは違う対応をする彼女に、思わず言葉にしてしまった。

 彼女の本質は陽気ではなく、粛々と任務をこなすようなタイプのはずだ。

 作り笑いにしか見えないものに思うところがあったのかもしれないな。


「俺に気付かれたくなければ、気配を一般人として偽ったほうがいい。

 それならわずかな時間くらいは稼げるが、気配を消して周囲を探っていれば、いずれは子供たちにも気付かれると思うぞ。

 どの道、屋根の上にいれば気づかないはずもないんだが」

「なはは! 耳が痛いっす!」

「ルーナとはお知り合いみたいね」


 テレーゼは訊ねるが、実際に顔を合わせたのはこれが初めてになる。

 バルヒェット冒険者ギルドマスターのフィリーネさんが信頼する冒険者か。

 諜報活動を専門にしてるって聞いたし、彼女が適任者だとは分かるんだが、気になることもある。


「ふたりはランクSじゃないのか?

 さすがに面が割れてるなら同席しないほうがいいと思うんだが……」


 世界でも最高峰のランクに到達した者は少ない。

 故にその情報は調べれば簡単に判明してしまうだろう。


 今回は暗殺者とも関わる可能性が高い。

 下調べ程度で露呈されちゃ、今後取る行動にも影響が出ると思うんだが。


 疑問に思っていると、ヴィクトル氏は彼女たちの代わりに答えてくれた。

 それにしても、宝石越しに俺の顔色が見えてるんじゃないだろうかと思えるくらい、彼には考えていることが筒抜けのように感じられた。


《ルーナはランクA、デルフィーヌはBになるよ。

 特にデルフィーヌはここ数年、小さな町の教会で慈善活動を主にしている。

 冒険者とは無縁の生活で顔が割れていることはないよ。

 ある程度戦うこともできるから、ギルド職員を置くよりは安心なんだ》


 グランドマスターがそれほどまで言うんだから、問題ないんだろうな。

 暗殺者なんて恐ろしい存在に狙われることで、少し神経質になってるのか。


「デルフィーヌ・ミュレーズと申します。

 戦うことを得意としていませんが、誠心誠意努めさせていただきます」

「そっちの専門はアタシっす!

 貴族の護衛なんて、ひとりでボコれるくらいは強いっすよ!」

「それに関しては疑ってない。

 プロとして(・・・・・)同席するんだよな?」

「お見通しみたいっすねー!

 一応、周囲警戒と交渉を終えた後の尾行はするっす!

 こっちが本業っすから、同じ(てつ)は踏まないっすよ!」


 ……本業ってことのほうに引っかかりを覚えるが、どの町のギルドマスターにも彼女のような存在は付いていそうな気がしてきた。


 こちらの意を酌んだ彼女の気配察知能力はかなり高いし、その実力も見合った強さを感じさせる。

 少々自信過剰な言葉を使っているが、芯の通った人物なのは間違いない。


 彼女でダメなら誰にも尾行はできないと判断されての人選だろうな。

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