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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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大樹の庭

 これまで訪れてきた町の2倍はあろうかという巨大な街門。

 潜り抜けた先に広がる別世界のような光景を、俺たちは驚きと興奮が抑えきれずに御者台や荷台から見回していた。



 バウムガルテン。

 俗に"迷宮都市"の名で知られるこの町は、200万人が暮らす都市だ。

 しかしそれは、ここを出ずに生計を立てている者たちのことで、外から来た冒険者や商人などは含まれていないらしい。


 隣の建物との間隔を大きめに取り、間には咲き誇る花や立派な公園のような場所が所々にあるこの町は、その名の通り大樹を中心に造られた"大樹の庭(バウムガルテン)"と呼ばれる美しい都市に相応しい名だと思えた。


 町の造りとしては、ほかの町とそれほど大きな違いはなさそうだ。

 この国ならではの建造物に石畳の上を馬車が歩く点は、これまでと変わらない。

 しかし、その規模が想像していたものとはまったく違うスケールだった。


 3車線、といっていいのかは分からないが、大きめの馬車が6台並んでも悠々と進めるほどの幅が造られているようで、その両脇をほっそりとした低めの街路樹が等間隔で植えられていた。

 さらに奥には様々な店が置かれ、行き交う人々も大都市と思えるほど込み合っているようだ。


 夕刻を告げる鐘の音が心地良く耳に届いた。

 道に面した商店が閉める準備をする気配すらなく商売を続けるのは、大きな都市ならではなのかもしれないな。


「わぁ! すごいね! おっきい町だね!

 あ、トーヤトーヤ! あれ、何のお店かな!?」

「盾のマークに金槌がついてる看板だから、防具修理の専門店だよ。

 思えばここは大都市だし、専門的な店が非常に多いみたいだな」

「南区と呼ばれたこの場所の活気は控えめで、落ち着きがあるほうなんですよ。

 飲食、衣服、武具、装飾、雑貨、家具、宿屋、教会、ギルド支部など、東西南北すべての地区に置かれていますが、中でも東区はここよりもずっと活気があって、お店だけじゃなく露店もたくさん並ぶんです」


 リーゼルによると、この都市の中央にそびえるかのような大樹の幹にある入り口がダンジョンへの道となっているそうだが、そこを中心として円形に建物が作られていったのが始まりらしい。


 魔導具は迷宮から入手することもあって、専門店は大樹の周辺に密集して置かれていると彼女続けて話した。

 その店舗数は、とても1日では回りきれないほど多くの店が並んでいるそうだ。


 本音を言えば回ってみたい衝動に駆られるが、それよりも済ませなければならない案件があるからな。

 まずは厄介な問題を片付けるのが最優先だな。



 国中どころか、世界中からやってくる来訪者が目指すもの。

 それは魔物が出現するダンジョンと呼ばれる場所だ。


 己の技術を磨くために戦える場所、それも自分に合った強さの魔物がいる階層で無理なく経験を積めることは、修練として最高だと言える。

 ましてやダンジョンから脱出できるアイテムや専用の回復薬など、安全性もわりと感じさせる場所は、盗賊や野盗といった無法者と遭遇する可能性がある町の外よりは遥かにいいだろう。

 残念ながら、研鑽を積む場所としては使われていないようだが。



 町の中央部は想像していた以上に広い間隔で建物が置かれているようだ。

 大広場の中心部に巨大な大樹が空に向かってそびえ、多くの武装した人たちの行き交う様子が見て取れる。

 ここからは見えないが、恐らくは大樹のどこかに入り口があるんだろうな。


 ギルドに隣接されている厩舎の前で馬車を返却し、ここまで引っ張ってくれた馬を優しくなでながら、俺たちは感謝を言葉にした。


 馬は人を見るって聞くし、相性が悪ければ蹴っ飛ばしたりもするらしい。

 もしかしたら、お礼の気持ちも馬に伝わっているのかもしれないな。


 そんなことを考えながら俺は家族を連れて、期待と不安が入り混じる会館内へと向かって歩いた。

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