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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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別の道を探すだけ

 信じ難い話をしているのは理解してるつもりだが、すべてが真実だからな。

 嘘になってしまう話を適当にするなんて、俺にはできない。


 あとは彼女の判断に任せればいいか。


「まぁ、そんな俺たちで、ここにいる全員が訳ありのパーティーなんだよ。

 あとはマンドレイクの女性が花の姿でインベントリの中に眠ってて、そのひとを元の姿に戻す目的も俺たちにはあるんだ」


 彼女と出逢ったのはブランシェを託される前になる。

 今にして思えば、あれはとても不思議な体験だったな。


 博愛と呼ばれる優しさを持ち合わせた女性。

 しかしこの世界では討伐の対照とされ、迫害を受け続ける種族。


 何度考えても苛立ちしか出てこない、冒険者と名乗る恥さらしの悪党ども。

 目にした瞬間、俺はそいつらの顔面に怒りのまま拳を突き立てるかもしれない。


 それでもあのひとは、悲しみを含んだ瞳で俺を見つめるんだろうな……。



「――って、話なんだよ。

 彼女を目覚めさせるほどの強力な媒体が必要になるんだが、それもこの一件が落ち着いたら探そうと思ってる。

 迷宮都市では魔物を倒すと核のような結晶体を落とすと聞くし、大物から手にしたものならそれなりの大きさや魔力の密度をしているだろうから、そいつを使えば彼女を元の姿に戻すことも可能なんじゃないかと考えてるんだ」


 花の姿になってしまった彼女が今どういった状況なのかは分からない。

 もしかしたら、もう目覚めることはない可能性だって十分に考えられる。


 ……それでも。

 そうだと確信していない以上、俺は彼女との約束を果たすと誓っているからな。


 まずはできると信じて前に進むだけだ。



 しかし、どうやら俺の推察はひとつ間違っているようだ。

 どこか言い辛そうにリーゼルは答えた。


「ダンジョンの魔物がドロップする核は正式名称を"魔晶石"と呼ばれていまして、魔導具を作るための媒体になる魔石とは別物だと言われています。

 名前はとても似ているのですが、似て非なるものと専門の研究者から結論付けられていますので、恐らくは魔石として使用するのは難しいかと思います」

「……そうなのか」

「……はい」


 だが、もしそうなった場合も考慮していた。

 ならば別の道を探すだけだし、あの町にあるダンジョンの奥なら不可能を可能にしてしまう人智を超えたアイテムはたくさんあるはずだ。


「当てがひとつ外れたが、それでもまだ可能性は十分にある。

 特に迷宮では誰が置いたのか"宝箱"が出現するらしい。

 潜れば潜るほど敵も強くなるってことは、それだけ入手できるアイテムが良質になるはずだと思うし、本格的にダンジョン攻略を目指してもいいかもしれない」


 前向きな考えに優しく微笑んだリーゼルは、頷きながら賛同してくれた。


 それだけあの迷宮は未だにすべてが解明されたわけではないのだろう。

 恐らくだが、現在でも最下層まで到達していないのかもしれないな。


 この世界にいる一般的な冒険者の力量を考えると、なまじ冗談に聞こえない。

 詳しくは分からないが、今も人の踏み入れたことのない場所があっても、なんら不思議なことじゃないからな。

 先に進むことが適えば最高のアイテムだって手に入るかもしれない。


「大昔には純度の高い魔石が手に入ったと聞きます。

 そういったものは恐らく魔導具として使われているはず。

 レジェンダリー武具につけられた魔石なら、媒体として使えるかもしれません」

「なるほど。

 上質の魔導具から魔石を取り外せばいいのか。

 となると、本格的にダンジョンを攻略する必要が出てきたな」


 彼女を元に戻せるならもったいない話だとは思わないし、どんなに価値のあるアイテムだろうと使うのをためらわないだろう。

 むしろ、だからこそ強力な媒体になるとも考えられる。


 ……レジェンダリーアイテムか。

 本気で手に入れる価値がありそうだな。

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