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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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教えるつもりもない

 しかし、問題事はこれだけではない。

 それ以上の厄介事が迫りつつある現状で、静観を続けるわけにもいかない以上、あの件についての話を始める必要がある。


 憲兵、冒険者の合同調査隊が正式に派遣されるのは明朝となる。

 現在はあえて詳細を伝えずに調査をじっくりとさせてもらう予定だ。

 村で起こった非道事件調査のために憲兵隊長とギルドマスターとの協議は必要になったが、それ以上のことは逆に避けるべきだと彼は判断した。

 ここで町民に説明したところで伝わるわけもなく、かえって反感を招く事態にもなりかねない、というのが俺たち大人の総意でもあった。


「…………手紙を拝見させていただきました。

 例の男は一昨日にバルリングを出立し、北西を目指したと情報を受けています。

 あくまでも方角は、という曖昧なものになってしまいますが……」

「……バルリングから北西……レーヴェンタールに?

 ……そのまま西のレーヴェレンツから進み、目的地はやはりバウムガルテンか。

 俺が指輪を所持しているのは現時点で分かっているとは思えない。

 となれば、迷宮都市での情報収集をするつもりなのか……」

「その推察は恐らく当たっていると私も思います。

 あの都市は、良くも悪くも様々なことを可能としてしまう場所です。

 ダンジョンに潜り、特殊な武具を手に入れることがすべてではありません。

 時には闇が牙を向く"魔都"とも、周辺の町では呼んでいるくらいです。

 表は煌びやかに見えて、道を外れると暗黒街のような場所もあると聞きます。

 もしかしたら、そちらが本当の目的なのかもしれませんね……」


 フォルツは静かな場所を好むようで、迷宮都市についてはあまり詳しくないらしく、どちらかといえば多くの人で溢れ返るような町は好まないそうだ。


 しかし、そんな彼であろうと聞き及んでいる噂。

 通称"暗黒街"と呼ばれた、悪党どもの巣窟。

 繁栄していればこそ存在する闇の部分。


 そんな分かりやすい場所に暗殺ギルドの本拠地を置くとは思えない。

 だが、ないとも言い切れない以上、その可能性も捨てられない。

 バルリングの闇よりも遥かに深く法の手が届かない場所があるそうだ。


 当然、街だなとど名称付けられていても区切られているわけではない。

 悪党だけじゃなく冒険者崩れのたまり場にすらなっている場所で、大規模な編成を組み、命すら賭けるほどの覚悟がなければ手が出せない無法地帯となっているらしい。


 噂の範疇を超えないが、他国で指名手配されている者も潜伏すると言われる。

 懸賞金つきで捕縛ないし討伐依頼が冒険者ギルドの掲示板へ大量に貼り出され、"ブラックリストハンター"と呼ばれる賞金稼ぎが迷宮都市に集まるそうだ。

 俺たちの目的ではないにしても、そういった"荒くれ者"との交流も持つべきじゃないだろうと思えてならなかった。


 何よりも子供たちを連れているからな。

 そんな危なくて怖い場所を知ってほしくもないし、教えるつもりもない。


 この子たちが笑顔でいられるように、大通りから細い道に進むことは避けた方がいいだろうな。

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