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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十二章 静と動
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手段を持つべき

 ふと気になって思わず訊ねてみたが、大人ふたりは魔法が強すぎるからな。

 下手に魔法を放てない以上、できることはかなり制限されてくるはずだ。


「私は可能であれば相手の視界を遮る魔法を使うなりして様子を見ますね。

 ブランシェさんもフラヴィさんも動きがとても速いので、攻撃魔法を放つよりも全体の流れを見ながら自分に何ができるのかを考えると思います」

「そっか!

 そうすれば作戦を立てたり変更したりができるんだね、さすがリージェ姉!」

「そうだな、俺もそれがいいと思うよ。

 冷静に対処をする必要がある魔術師は、後方支援がいいと俺には思えるんだ。

 何も魔法で敵を倒すことがすべてじゃないし、何よりも前衛で戦っていると周りが見えなくなる危険性が出てくる。

 そういったことも経験でどうにかしていくものではあるんだが、それよりもまずは冷静に判断を下せる指揮官のような役割を引き受けてくれる人がひとりないし、ふたり必要になると思う」

「ひとりでは少ないのか?

 それでも十分だと我には思えるが」

「いや、できればふたりいた方がいいと俺は思ってるんだ。

 戦況を見極められる人がもし間違えた場合、それはパーティーの壊滅すら視野に入る可能性が高まるから、もうひとり同じように冷静な人を置くべきだと思うよ」


 可能なら考え方の違う人が望ましいが、反発するような者ならいない方がいい。

 その点、うちには物事を冷静に見極められる大人がふたりもいる。

 彼女たちがパーティーの頭脳として支えてくれたら、より強固な磐石とも言える体制で戦いを遙かに安全なものとしてくれるはずだ。


「――というわけで、ふたりにはそういったことも考えて欲しいと思ってる。

 時間も持て余らせてしまってるし、これもいい機会だと思うんだ」

「なるほどな。

 我であれば力任せに戦況を変えられるが、それでは意味がないからな。

 子供達の育成とパーティーの安定を求めるなら、後衛はいくらいてもいいのか」

「まぁ、我の強すぎる人だと、かえって安定感を悪くするからな。

 そういったやつに後衛は向かないが、ふたりには当てはまらない。

 俺個人としても冷静なふたりに努めてもらえたら安心できるよ」

「頼られるのはとても嬉しいのですが、そもそもトーヤさんがいらっしゃるのに私たちも後衛に回ると、かえって場を乱したりはしませんか?」


 リージェの言葉はもっともだな。

 しかし、俺だけに頼り切るのは危険だ。

 何よりも違った状況でも戦えるようにしたい。


 その意味を理解してくれたレヴィアは、なるほどと言葉にしながら答えた。


「つまり、(ぬし)がいない状況を踏まえてか」

「そうだ。

 正確には"俺の手が離せない場合"も含まれる。

 そんな時も冷静に対処ができなければ大きな混乱を招くから、できるだけ俺の指示なく行動した上で安全に勝利するのが理想だな」

「……そっか。

 いつまでもトーヤに頼りっきりじゃ、一人前とは言えないんだね……」


 そんなつもりはないが、少なくとも自分たちだけで勝利を掴めるのはみんなにとってもいいことだし、必要に応じてそれができなければ逆に危険だとも思う。

 何が襲ってくるかも分からない世界で、危険な連中が今にも襲いかかるかもしれないのが現状なんだから、できるだけ自分達で解決する手段を持つべきだ。


 それには経験が必要になる。

 こうして戦い、失敗を続けることにも意味があるし、この子たちは物覚えがいいからすぐに間違いを修正して次に活かすことができる。


 こんなこと、普通の子供には無理だ。

 これは魔物や盗賊がいる世界だからこそかもしれないが、命と隣り合わせのような場所では考え方そのものが違うのも当然なんだろうな。


 少なくともこの子たちは、"大切なもの"を持っている。

 それこそが強くなるためには何よりも必要となる大切なものを。


 人は、闇雲に剣を振るっただけでは強くなれない。

 それは何千、何万回と素振りを続けたところで同じことだ。

 そこに"何か"を見つけられるか、そして何よりも"大切な誰かを護りたい"と強く想わなければ、きっと強さにはすぐ限界が見えてくる。


 どんな理由でも、"強くなりたい"と本人が思わなければそれほどの強さは手にできないし、ただただ月日を重ねるだけになるだろう。


 だからこそ、我流は限界を感じる時期が早い。

 そしてそれほど強くはなれないと俺は思う。


 それについて、そろそろこの子たちにも学ばせる必要があるかもしれないな。

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