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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十一章 長い夜
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ふたつの可能性しか

 これは色んな意味で厄介な武器、もしくは文字通り凄まじい剣なんだろう。


 魔導具の中には恐ろしい効果を持つものもあると、専門家から学んだ。

 そのひとつが"呪い"を連想してしまう、対象者を弱体化させるアイテムだ。


 ほとんどは発動させて相手にぶつける類のもので、効果はまちまちではあるが厄介なものも多いと聞いてる。

 誘導性はないらしいから避ければ問題なさそうに思えるが、さほど魔力を必要とせずに使えるだけじゃなく、魔法に適していない一般人でもアイテムさえあれば発動できることもあって、魔導具を扱う者達ですらも非常に危険視しているほどだ。


 そういったもののほとんどは首飾りや腕輪、サークレットや指輪などのアクセサリーに集中しているが、中には武器にも効果を持つものがあるらしい。



「何やら不穏な文言で書かれているが、そもそもレンゴクとは何なのだ?」

「煉獄は亡くなった人の中でも天国、つまり生前に良い行いをし続けた人が向かう穏やかな場所へ行くことのできない者が死者の世界に向かう前に訪れる中間的な場所で、苦罰によって罪を清められた後に天国へ入ることができると言われている。

 これはあくまでも俺がいた世界で言い伝えられているもののひとつだな」

「……難解で我にはよく分からぬが、その意図は分かるのか?」

「それどころか、ここの謎も解けたよ。

 どうやらここを造ったやつも"空人"らしいな。

 ルートヴィヒよりも遙か以前にこの世界へ降り立ったんだろう」


 空人がこの世界にやってくるのが200年周期とは限らないし、どれだけ昔に辿り着いたのかは分からないが、少なくとも俺の世界で煉獄の教えがあった時代か、それとも俺のいた世界に良く似た"別の場所"からやってきた可能性が高い。


 絵画に描かれた人物の服装から判断すれば中世ヨーロッパの貴族を連想するが、それも書いた本人じゃなければその意図を深く理解することは難しいだろうな。

 それが何を意味しているのかも俺には答えられないが、そもそも意味なんて初めからないのかもしれない。


 空人と呼ばれる者は文字通り、"異世界に迷い込んだ人"、なんだろうか……。


「それで、石碑に書かれているのはどういう意味になるの、トーヤ」

「煉獄ってのは、天国と地獄の間にあるとも言われているんだ。

 ヒントの言葉が意味する観点から人物は外せないように思えて、その実、誰かを特定できるような言葉は書かれていなかった。

 この場合、人物画はすべてハズレと見るべきだろうな。

 直接的な"死"を連想させる墓地や処刑台も、厳密に言えば煉獄とは違う。

 天ではなく地でもない場所、つまり、"小高い丘"の風景画が正解だな」

「ふむ、なるほど。

 それならば納得がいくが、それは詰まるところ(ぬし)のような"迷い人"でなければ答えられぬという意味ではないか?」

「そうなるな。

 恐らくこの洞窟を切り開いて剣を隠した空人は、この世界の住人には渡せない何かを隠していたのかもしれない。

 それが剣の性能なのか特殊な効果を持つのか、それともまったく別の理由かは分からないが、少なくとも遊び半分で隠したわけじゃないことだけは確かだと思う。

 それに空人だろうと"煉獄の意味"を知らなければ先に進めないようになってる。

 それらを考えると、俺にはふたつの可能性しか見えてこなかったよ。

 特殊な能力を持つ剣か、それともこの世界の住人に渡るとまずいものか。

 そのすべては、この先に進むことで分かるようになるのかもしれないな」


 ルートヴィヒはすべてを理解した上で放置した可能性も出てくる。

 あくまでも彼は"手に負えないもの"と手記にしたためていた。

 その後に続く"売り飛ばせなかった"とは、彼なりのジョークなのか?


 そもそも空人ならインベントリを所持していたかもしれないんだ。

 放り込んで出さずにいればいいだけなのに、こんな手の込んだ謎解きまで用意して剣を隠す意味はひとつしか考え付かない。


 この先に、厄介極まりない武器(・・・・・・・・・)が安置されているんじゃないのか。


 それを手にしたところで使えないんじゃ、ただの徒労だ。

 俺が欲しいのはすべてを切り裂く剣じゃない。

 自分の手足のように扱える、頑丈な武器だ。

 欲を言えば奥義に耐えうる強度が欲しい。


 ……まさかとは思うが、世界を滅ぼしかねないような恐ろしい武器が眠ってるんじゃないだろうな……。

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