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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十一章 長い夜
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決定打

 颯爽と駆け寄るブランシェ。

 その背後にはフラヴィも続く。


 中々面白いことを考える。

 ブランシェの体にすっぽりとフラヴィが隠れているな。

 これはふたりの案ではなく、後ろで待機をするエルルのアイデアか。

 相手の視界に映らず強襲をかけるには有効な作戦だ。


 俺が教えていないことを思いつき、実行に移せるのはあの子の強みか。

 魔法使いは誰よりも冷静に戦況を見極める必要があるのかもしれないな。


 だが、気配を読める俺には丸見えだ。

 この空間全体を支配するかのような使い方ができる以上、効果を見せない。

 魔物にも効かないだろうが、これはあくまで対人戦を想定しての訓練だ。

 となれば、効果は十分にあるが。


「ぅおりゃぁああ!!」


 大振りすぎる木槌を避けながら手首を押し下げ、ブランシェを豪快に地面へ転ばせるのと同時に続くフラヴィの繰り出した鋭い突きを避ける。

 瞬時に袈裟切り、左切り上げ、刺突の3連撃を鋭く見せるが、俺には通じない。


 バックステップをしてふたりとの距離を取るも、その場所を予測していたエルルの魔法"小さな火の衝撃スモール・ファイア・インパクト"がこちらに放たれたことに思わず口角が上がる。


 いい判断だ。

 相手の位置を予測し、的確な場所に魔法を飛ばしてる。

 それもフラヴィが追撃しないところを見ると、これも作戦の一環だな。


 ……だが、残念ながらそいつも俺には通用しない。

 力を込めて強引に斜め後方へ弾き飛ばすことくらい、造作もないことだ。

 表情を一切変えず、涼しい顔で左手の甲を使い、軽くはたく(・・・)


 こうすれば相手からは左手のみで軽々と魔法を弾いたように見えるはずだ。

 魔法を霧散させる手段も、相手に魔法は通用しないと思わせることができる。

 ましてやこの技を口頭での説明だけではなく、実際にその目で初めて見るエルルたちにとっては、動作を完全に停止させるだけの衝撃があったようだ。


「えぇぇ!?

 なにそれぇ!?」


 後方で叫ぶように、エルルは驚きを含んだ涙声を大きく上げた。

 この魔法は俺自身が体験して重さのおおよそをすでに掴んでいるからな。

 これだけ何度も見ていれば、多少重量を変化させたところで弾くのは問題ない。


 "静"と"動"の複合上位技、"(りゅう)"。

 "円"を極め、"動"に系統する技である力を放つ"(ほう)"を応用したこの技なら、強引に力の流れを変えることが可能となる。


 "静"系統はこれまでいくつか基本技を見せたが、"流"は一度話に出しただけだ。

 これは文字通りの効果を見せるだけじゃなく力を放つ"放"を強めに使うことで、こちらに向かって飛んで来た大木だろうが大砲の弾だろうが、そのほぼすべてを弾き飛ばせるだけの凄まじい効果を見せる、体得すれば非常に役に立つ技術になる。


 ……まぁ、日本でも修練以外じゃ1度も使ったことがないんだけどな……。



 どうやら今のが決定打になったみたいだ。

 その場にへたり込むエルルとフラヴィ。


 ブランシェは倒れこんだまま手足をバタつかせながら、うがうが言っていた。

 もやもやが溜まるかもしれないが、自分よりも強い者と戦うことはこの子たちにとってもいい経験になるし、何よりも今だからこそ必要だと俺は感じている。


 そもそも子供たちを暗殺者と戦わせるつもりなんて毛頭ないが、相手が複数の、それも数で押し切るような戦いを迫られた場合、この子たち自身の対処力で解決できなければ最悪の結果を導き出しかねない。

 単純にこの子たちの身心を鍛え、安全で健やかな旅を続けていくためにも必要だし、魔物と戦うだけではなく対人戦をしっかりと学ばせるのは悪いことではない。


 気配察知も万能ではないと考慮した上で行動するべきなのは間違いない。

 俺が持つ技術のすべてを教えきるには時間が足りなさすぎるが、それでもできることは可能な限り教えてあげたいところだな。

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