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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十章 人ならざるもの
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折角の機会

 村の中央まで勝手に入ると、武装した連中が待ち構えていた。

 尻尾を巻いて逃げ出した情けない男が集めたようだな。


 ……あの時は見なかったやつが3人いるな。

 今度は本物の剣や槍、斧の代わりとなりそうなものを手にしているようだ。


 しかし、そんな手入れが行き届いてない錆び付きのショートソードや、棒に刃物をつけただけの原始的なもの、伐採用具としか思えないような道具を武器として頼るこいつらの神経が信じられずにいた。


 おまけに構えは素人そのもの。

 立ち姿どころか、武器の持ち方すら学んでいない始末。

 いっちょまえに鋭く睨みつける気構えだけは立派に思えるが、少し威圧を放っただけでも表情を大きく変化させるような体たらく。

 ただただ情けなく思う恥ずかしい姿を見せつけられていた。


 反面、俺の苛立ちを募らせる目的なら達成しているな。

 怒りに任せて制圧してみろって意味なら、たいしたもんだと感心する。


 これほど挑発的な連中を相手にしたことがない俺としては、1秒でも早くこんな場所を離れたいと本心から思えたが、それでも問いたださなければならないことがある以上、ここで眼前の敵を真っ先にぶっ潰すわけにもいかない。


 今もこちらを射殺さんばかりに睨み続け、すり足にもなっていない中途半端な動作で何かをしたそうな中年男どもへ、俺は冷静に質問した。


「何のつもりか、一応聞いてやる。

 お前ら、俺たちが来た時にはいなかったな。

 家の中で震えていたんなら、引き篭ったままの方が良かったんじゃないか?」

「――テメェ!!」

「言わせておけばクソガキが!!」

「俺たちがいない間に随分舐めた態度をしてくれたそうじゃねぇか!!」


 一瞬、思考が凍りつく。


 なんだ?

 今、何を言ったんだ?

 精神攻撃の一種か?


「言っている意味が、まるで理解できないな。

 誰かこのサルどもの翻訳ができるやつはここにいないのか?

 舐めた態度を取ったのがどっちなのかも分かってない知能の低さだぞ。

 こんな馬鹿どもを代弁者に置くなんて、常軌を逸しているとしか思えないが」

「……邪悪な魔王め……」


 男どもの言葉が理解できず、20名ほどいる村人へ視線を巡らせながら言葉にするも、ひとりのジジイに奇妙なあだ名を付けられたことに意識が向いた。


 こいつは見覚えがあるな。


「……あぁ、思い出した。

 俺の威圧にびびって、虚ろな瞳で震え続けていた情けないジジイじゃないか」

「い、言わせておけば……」


 震えながら言葉を返すが、そう簡単に恐怖心は拭えない。

 視線を逸らすあからさまな仕草に思わず笑いそうになった。


 村長と思われるジジイだけじゃないようだな。

 村人全員が俺に恐怖心を抱いているのは間違いない。


 それでもこうして対応していることに首を傾げるが、こちらの質問をする前にじりじりと詰め寄る連中をどうにかする必要がある。

 どうやら頼みの綱のようだし、こいつらを黙らせれば大人しくなるだろうな。


「――で?

 そんなおもちゃで何をしようってんだ?

 俺はお前らみたいなオッサンどもと遊ぶ趣味はないぞ?」

「俺たちがいないのをいいことに好き勝手しやがって!!」

「戦えない連中を脅していい気になってんじゃねぇぞ!!」

「ガキはガキらしく大人の意見を聞いてりゃいいんだ!!」


 ……なんかこれ、奇妙な既視感(デジャヴュ)があるな。

 昔読んだマンガにこんな感じのがあった気がする。


 となると、連中からすれば俺は悪の帝王で、あっちが正義の味方気取りか?


 ……いや、これ以上考えない方がいいな。

 本気で連中の顔面に右拳を当てたくなってしまう。


「……まさかとは思うが、そんなゴミみたいなものを持って俺と戦う気か?

 言っても無駄なのは理解してるつもりだが、念のため忠告してやるよ。

 相手との力量差が分からない程度の力を振りかざせば、すべてを失う可能性があるぞサルども」


 連中のひとりから聞こえた歯軋りが引き金となり、3人の男どもは俺に向かって武器にもならないようなものを振りかざした。


 そう仕向けたことすらも気がついていないようだな。

 まぁこれだけ低脳な連中なら、意識を俺に集めるのも楽で助かる。


 お前らをボコれば他の村人も大人しく話を聞くだろう。

 どうせなら豪快に人を回転させる練習に付き合ってもらうとするか。


 折角の機会だ。

 そう簡単にへばるなよ。

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