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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十章 人ならざるもの
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知りたいと願うなら

 冷静にブランシェをなだめていると、元水龍から失礼な言葉が飛び出した。


「つまり、我の体には欲情した、ということか?」

「そういう意味じゃないし、そんな話はしていない。

 目のやり場に困ると言っただろうが。

 それから欲情とか言うな」

「トーヤさんには大切な想い人がいますからね」

「……そういう意味でもないんだが……」

「貞操観念と呼ばれるヒト特有のモノか。

 実に興味深いが、理解するのは中々に難しそうだ」


 ……なんだ?

 俺の周りには天然体質が集まりやすいのか?

 これもすべてはパティさんの言っていた"女難の相"が関係しているのか?


 彼女の驚異的ともいえる的中率の高さに身震いしていると、どうやらエルルに余計な影響を与えてしまったようだ。


「ねね、トーヤトーヤ!

 あたしはあたしはー?

 よくじょーする?

 ……うふん」

「魅力的な女性になるつもりなら、そういったことはしない方がいいと思う。

 品性を疑われかねないし、安っぽく思われたくなければ気品を持つべきだぞ」

「……あ、はい……。

 ……ごめんなさい……」


 くねくねしていたエルルは、しょぼくれながら言葉にした。


 一概に悪い行動だとは言い切れないが、俺は上品さを持つべきだと思う。

 この子にはそれができるようになるだろうし、いずれはかなりの美人になれる。

 そんな女性が取る行動ではないと思うから、今の内にしっかりと教育しよう。


 まぁ、今の反応から察するに、もう学んでくれたと思えるから心配いらないな。

 恐らく迷宮都市で逢うだろう女性に会わせていいものかは悩みどころだが……。


「それで?

 今まで聞かなかったが、名前はあるのか?」

「ふむ。

 我ら龍種は元々数が非常に少ない。

 故に固有名詞をつける必要性がなかった」

「つまり、ないってことか」

「そうだな」


 少し回りくどい言い回しに聞こえたが、彼女もリージェと同じく名を持たない種族のようだ。


 いや、リージェはある意味で本当に特殊な存在か。

 旅の仲間として同行した当時は、あのマンドレイクの女性と似ているとも思ったが、彼女はそういった種族だと俺には思える。

 リージェはこの中でもいちばん不思議な存在なのかもしれないな。


 そういったことも、旅をしていれば分かるようになるのか?

 彼女自身は興味がないようだが、いつかは疑問を持つことだってあるだろう。


 自分が何ものなのか。

 哲学的な意味ではなく、本当にそれを知りたいと願うなら力になればいいか。

 もっとも、楽観的に思える彼女が気にすることもないかもしれないが。


「ねね、トーヤ」

「……言いたいことは分かるが、なんだ?」

「リージェ姉の時みたいに、トーヤが水龍さんにつけてあげてよ。

 お名前で呼べないなんて寂しいでしょ?」

「む?

 我に名をくれるのか?」


 わりと嬉しそうな声色をする元水龍だった。

 しかし本当に俺がつけていいんだろうか。


「いいのか?

 自由に名乗ってもいいと思うんだが」

「龍種に名付けを期待しない方がいい。

 我らはそういったことに疎いからな」


 彼女の言葉にそれもそうかと妙な説得力を感じた。

 とはいえ俺も急に名を付けられるほどの知識はない。

 リージェの時のように、インスピレーションでつけることしかできないんだが。


「……そうだな。

 じゃあ、"レヴィア"ってのはどうだろうか?」


 伝説上の存在だが、初めて彼女を見た時にまずその名を連想した。

 俺の世界でどう思われていようが、その性質が彼女には似つかわしくなかろうが、名前自体はかなり気に入っているからあとは彼女に決めてもらおう。


「ふむ、レヴィアか。

 とても良い響きの名だな。

 これからはそう名乗らせてもらおう」

「……そうか」


 内心は心配だったが、どうやら取り越し苦労のようだ。

 とても嬉しそうに見えるレヴィアに、俺は頬を緩ませた。

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