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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十章 人ならざるもの
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異質な場所としか

 神殿とも思える構造の通路を真っ直ぐ歩き続ける俺たちは、その先にある大きな空間の中央に造られた小さな台を見つけた。


 これまで一度も気配がないことに違和感を覚えるが、やはりここは特別というよりも、俺が体験し続けてきたものとは完全に異質な場所としか思えなかった。


 それを証明するかのように、ぽつんと置かれた台座。

 上には何も乗っていないようだが、その用途の見当はつく。

 祭壇にも思える台座に触れようと足を前に出すと、重厚感のある音が響いた。


 〔……何用だ、ヒトの子〕


 水龍のものとは明らかに違う男性の声が周囲を震わせ、俺たちに緊張が走る。

 どこから発せられたものなのかですら俺には判断が付けられないような、まるで四方から断続的に放たれている声に、危険な存在かと警戒心を強めた。


 龍種がこの世界にいる以上、それよりも高位の生物が存在したとしても何ら不思議ではないが、それでも思わず固唾を呑む。

 それほどの強者かどうかも分からないが、ひとつだけ確かなのは、声の主が並みの存在ではないことだけだ。


 もっと言えば生物なのかも疑ってしまう。

 まるで氷のような凍てつく声色にも思えた。

 しかしヒトよりも、いや、龍種よりも高位の存在だと仮定して話をするべきか。


 敵対するとしても相手より先に手を出してはいけない。

 それでは意味がまったく変わってしまう。


 いまは俺ひとりじゃない。

 こちらはあくまでも対話を試みるべきだ。


「……水龍を人の姿にできる秘術があると聞いた。

 あんたがこの世界の神(・・・・・・)なら、力を貸してもらえないか?」


 神を相手に不遜な態度になるが、こちらにはこちらの言い分がある。


 問答無用でこの世界に放り込まれたんだ。

 まともな言葉で対応できるほど俺は大人じゃない。

 声の主がもし本当に神だとすれば、ではあるが。


 本物であれば色々と聞きたいこともあるし、地球に帰還する方法も知っている可能性があるだろう。

 俺がこの世界を歩くはめになっている理由も、神ならば知るはずだとも思う。


 〔……余は神ではない〕


 ……やはりそうなのか。

 では何ものだと訊ねたいところだが、思いのほか気持ちが沈んでいるみたいだ。


 すべての疑問がそう簡単に解決できるとは、さすがに思ってない。

 それでも少しくらいの情報は手に入ると期待していた。

 残念ながら、そうはならなかったようだな。


 声の主が放つ気配はまったく読めない。

 しかし今の言葉が嘘ではないことだけは不思議と理解できた。

 それについて嘘をつく意図もないと思えるが、少なくとも神を僭称しているようなものでもなさそうだ。


 だとすれば声の主は何ものだ、という疑問に思考が戻る。

 これだけ人智を超えた空間に隠れ住むような存在が並みの生物だとは思えない。

 ……いや、ふたつだけ俺にも推察が立てられるが……。


 どちらも神と同じく信じがたい存在になるだろうけど、ここは異世界だ。

 もしかしたらそれらは神と違い、本当に世界のどこかにはいるかもしれないな。

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