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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十章 人ならざるもの
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奇妙な違和感

 壁面や天井を見ながらしばらく進んでいくと奇妙な違和感を覚え、足を止めた。

 不思議そうにこちらを見つめる4人だが、俺は眼前に意識を集中し続ける。


「どしたの、トーヤ?」

「……何かあるな」


 再度質問されるよりも前に手を伸ばす。

 70センチほど前方に出すと波紋を広げ、右手首から先が見えなくなった。


「と、トーヤの手が!?

 大丈夫なの!?」

「問題ない。

 どうやらこの先は別空間みたいだな」


 まるで水面のように揺らめく空間を調べるも、特に異常は感じられない。

 前に出て顔をつけてみると、やはりその先はこことは違う構造になっていた。


「ごごごごしゅじんの顔がなくなっちゃったッ!?」

「ブランシェも落ち着け。

 問題ないからこのまま進むぞ」


 先行して周囲の危険を探る。

 何も反応はしていないが、違和感がなくならない。

 それどころか、さらに強くなったように思えた。


 ……なんだ、これは。

 内装も極端に変化した。


 淡く青白い壁と天井。

 細かな装飾が細部に至るまで丁寧に施され、さながら神殿のように思えた。

 明るさも先ほどとは違い、しっかりと室内上部に取り付けられた()から優しい光が差し込んでいる。


 先ほどまでいた場所とは違うのか?

 まさか、"転移装置"みたいなものか?

 それとも光に見えるもの自体が作り物なのか?


 混乱する思考をまとめようとするも上手くいかない。

 それどころか、あまり考えたくない推察ばかりが次々と浮かぶ。


「わぁ! きれい~!」

「ほんとだね~!」


 楽しげな様子のフラヴィとブランシェだが、それどころではなかった。

 首を傾げることすらできず、俺は固まり続ける。


 そんな俺の耳に冷静な声が届いた。


「ここには空気があるのですね」

「……そう、みたいだな……」


 きゃっきゃと喜びながら周囲を物珍しそうに見回すフラヴィとブランシェ。

 そんなふたりとは違う反応を見せるリージェだが、彼女からすればこれといって特に違和感を覚えていたわけではないようだ。


 ただ思ったことを言葉にしただけみたいだな……。

 色々とずれている3人に、思わずため息が出そうになる。


 だが問題は山積している。

 そもそもなぜこんな場所に空気があるのか。

 そして窓と思われるものから差し込む光は何なのか。


 その答えはふたつになるだろうか。


 ここは先ほどの水中神殿とはまったく別の場所。

 もしくは同じ場所でありながらそう感じさせるような人智を超えた(・・・・・・)空間か。


 どちらの可能性も信じがたいし、本音を言えば信じたくない。

 しかし、これは夢や幻の類ではないことも理解している。


 だとすれば、考えたくもない現実が待っているかもしれない。

 いや、もうこれはかなりの確率で推察が当たっているだろうな。


 ……真っ直ぐ伸びた通路の先に……いるのか……。

 人ならざるものを人に変えた秘術を与える存在が……。

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