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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十章 人ならざるもの
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悪い癖か

≪……この辺りだな≫


 そう言葉にした水龍はゆっくりと速度を落とし、その場に止まった。

 当時のことを思い出しているのか、視線を水底に向けながら何かを考えていた。


 どうやらこの周辺の水底はそれほど深くなく、80メートルから100メートルくらいの深さが続いているらしい。


 世界最大の湖フェルザーといえど、湖底の深い場所は限られるそうだ。

 基本はとてもなだらかになっている地形がほとんどで、水龍が眠っていた場所が適度に深く、静かに過ごすには中々快適だったと彼は言葉にした。


 場所によっては深度が1キロメートルは優にあるだろうなと言葉にした水龍に驚く4人だが、世界でもいちばん大きな湖と言われているくらいだ。

 それ以上の深さはあっても不思議じゃないと、俺は冷静に考えていた。


 さすがにぼこぼことした水底になっているとは思っていなかったが、それでも突如として現れる1キロもの深度に何も思わないわけではない。

 地学を専門に学んでいない俺にはその理由に答えを出せそうにないが、わりと興味が尽きない話だと思えた。


≪正確な場所を探すには水に潜ることになる。

 さすがに小船は邪魔になるからここに置いていくか≫


「確かにそうだな。

 ……子供たちも俺と行くつもりみたいだし、リージェは俺と遠く離れられないから結局全員で行くことになるな」


 しょうがないなと思いながらため息をつく。

 本音を言えば、何が出るか分からない場所に連れて行きたくはない。

 リージェは仕方ないとしても、子供達は水龍の傍にいてもらおうと考えていた。


 そんな気持ちもしっかりと伝わったのだろう。

 当たり前だと言わんばかりに、みんなは答えた。


「あたしたちだけ置いてけぼりはダメだよトーヤ!」

「ふらびいも、ぱーぱといっしょがいい」

「アタシもごしゅじんと離れたくないから一緒に行くよ!

 なんか出たら、アタシがごしゅじんを護るんだ!」

「水の中にある遺跡だなんて、とても行けない場所ですからね。

 どんなところなのか、胸が高鳴ります」

「……しかたないな」


 ……色々と突っ込みたくなる言葉が飛び出しているが、諦めるしかないか。


 水龍ほどではないにしても、強い魔物がいないとは限らない。

 それに加えて水中での戦闘ともなれば厄介としか言いようがないんだが、何が起こるのか楽しみだと思っている4人には何を言っても無駄だと悟った。


「……で?

 実際の加護ってのは、具体的にどんなものになるんだ?」


≪簡単に言うと、水中でもある程度自由に行動ができるはずだ。

 とはいえ、我も実際に使っているわけではないものだし、そういった力の使い方ができると知っているだけで、試すのもこれが初めてになる≫


 わりと曖昧だが、水の中でも自在に生きられる水龍には不要の力なのは分かる。

 なぜそんなものを彼が持っているのか気になるところだが、何でもかんでも気にしすぎるのも良くないだろうな。


 ……俺の悪い癖か。

 ある意味ではこれも弱点になりうるが、考え足らずよりはずっとマシか。


≪込めた力で効果時間も変化するはずだから、かなり強めに込めるつもりだ。

 最低でも半日は続くと予想しているが、何か問題があればすぐに戻ってくれば力を込め直すから、そのつもりで行動して欲しい≫


「わかった」


 潜る際、水龍につかまった方がいいか聞いてみたが、浮力がほぼゼロになるらしく、水中での呼吸も問題ないそうだ。


 淡い水色の光が体を優しく包み込み、それが消えたことを確認すると水龍は言葉にした。


≪……問題なさそうだな。

 では目的地へ向かうか≫


「あぁ、頼む」


 ゆっくりと水中へ入る水龍。

 さすがに勢いよく潜ると周囲に影響が出る。


 これも生活の知恵だなと、どこか人間のような言葉を出したことに頬が緩んだ。

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