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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十章 人ならざるもの
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考えすぎだろうか

 ぽつりと呟くように俺は答えた。


 その可能性を失念していたが、それも村での体験やドラゴンなんて高位の存在と出会ったことが判断力を大きく曇らせているのかもしれない。

 並みの冒険者が経験できる出来事を大きく逸脱しすぎている俺たちの旅だが、何らかの意思が関与していると言われても納得してしまいそうだ。


 ……いや、それはさすがに考えすぎ……だろうか……。



 ともあれ、ここは世界最大の湖と呼ばれる場所だ。

 これだけ巨大な水龍が悠々と住まうくらいだし、遺跡のひとつやふたつが水の底に沈んでいたとしても何らおかしな話ではない。


 祭壇や遺跡が水没したからといって宗教がなくなるとは限らないどころか、人が踏み入れられない場所を神聖視される方が高いと思えてならない。

 フェルザーの湖ができた理由にも関係してきそうなほど遙か昔の話になるなら、水龍が知らなくても当然だろう。


 むしろ湖底に沈んでいるということが何を意味するのかを考えると、1000年どころではない遙か古代から神と交信していた痕跡があったことの証明となる。

 中世文明しかないこの世界だろうと、そういったものの発見となれば歴史的事件にすら発展する可能性があるが、目立つことを嫌う俺としてはそんな気もない。


 他の龍種にも知られていないだろう湖底の遺跡は、魔物さえいなければ荒らされることなく綺麗な状態を保っているはずだ。


 だが、大昔の人間が何を崇拝していたのかは分からない。

 ただ漠然と架空の水神を祀っていただけなのかもしれないな。


≪そこに祭壇があるかどうかは我には分からぬ。

 言葉にするなら、遺跡と思われる場所になるだろうか≫


「曖昧だが入り口はあるという意味か。

 まぁ、人が造った建造物の中には、さすがに入れないと思うが」


≪小さくなれる能力があれば、我はそこを住処にしていただろうな≫


 水龍の言葉に妙な説得力があった。

 そもそも人との関わりを避ける傾向のある龍種、それも水中を住処にする水龍であれば、湖底にある建造物は魅力的な場所だと言えるだろう。


 それでも彼がこれまで忘れていたのは、結局入れないのでは意味がないからだ。

 巨大な身体を小さくできない以上、なるべく深度のある湖底で身を隠すように過ごしていたのも道理と言えるかもしれない。


 だがひとつ、いや、とても大きな問題がある。


「……遺跡が湖底にある以上、俺たちにはどうしようもないな。

 泳いで行ける場所だとも思えないし、俺には水中で呼吸する術を持たない」


 そんなスキルがあれば純粋に欲しいと思ってしまう。

 それさえあれば専用の重い装備なしでダイビングが楽しめる。

 いや、水底を歩いて散歩することすらできるかもしれない。


 非現実的な行動だが、ここは日本ではなく異世界だ。

 フェンリルやドラゴンなどが存在する剣と魔法の世界だ。


 徒歩での水中散歩が本当にできるかもしれないし、それを現実にする道具があっても不思議じゃないと俺には思えてならない。

 希少なアーティファクトだろうと、存在するなら探してみたいと思えた。


 ……厄介事さえなければ、もっと自由に世界を旅できたんだがな……。

 今更言ってもどうしようもないが、すべてが無事に解決したらみんなと遊ぶことを考えながら行動してみるのも楽しそうだ。


 俺を含め、みんなが強くなってからの話ではあるんだが、湖でものんびりと過ごせるだろうし、少しの間ならのどかな町で静かに暮らすのもいいな。

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