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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十章 人ならざるもの
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お手上げだな

 ここまで俺の推察を話すと、水龍はどこか期待を込めて言葉にした。

 残念ながらそうはならないだろうと俺には思えてしまうんだが。


≪ふむ。

 だが、一歩前進ではないか≫


「いや、ここで話は止まる。

 正直これ以上は情報が少な過ぎてお手上げだな。

 現実的に可能なのかも判断できないし、いったいどんなものをどこで信仰していたのかも分からない」


 水の神、つまりは水神だということくらいは理解できる。


 しかしそれは水龍のことを指してはいない。

 もしそうであるのなら、彼が知らないはずもないんだから。


 これまでの話から察するに、彼はひとりでこのフェルザーへやってきた。

 住処を決めて、静かに暮らし始めたのがおよそ1000年前。

 儀式は同時期かそれ以前から行われていたものと思われるが、抽象的過ぎる内容からすべてを理解することは不可能だ。


 そもそもこれは"言語理解"スキルが正常に働いていることを前提とした話だ。

 言葉に違和感を覚えるし、具体的なものを示すような単語は含まれていない。

 そこから必要となる"白い書物"、恐らくはアーティファクトと思われるそれを、たったこれだけの情報量で見つけ出すのは至難の(わざ)としか言いようがないんだ。


≪……ふむ。

 ヒトの子が信仰していた場所、か……。

 我がその儀式を目の当たりにしたのは近くの沿岸だったと記憶しているが≫


「あの周辺にそれを連想させる場所があると、俺は聞いていない。

 恐らく違う場所、それも現在ではもう使われていないどころか、誰にも知られてない可能性が高いと思う。

 それこそ当時の連中ですら使えなかったとしても不思議じゃない」


 もっとも、これもすべて学んだ知識によるもので、教えてくれた先生が言い忘れていることも考えられなくはない。

 ……あの人のことだから、それほど深くは考えていなさそうでもあるが。


「ねぇ、トーヤ。

 具体的にどんな場所なのかな?

 やっぱり教会みたいなところなの?」

「まぁ、そういった場所も確かにあると思うが、もっと古代的な場所だろうな。

 たとえば青空の下にあるような祭壇とか、大きな樹木なんてのもある。

 他には遺跡、神殿、祠、社、洞窟、山や海、滝とかか。

 ざっと思いつく限りではこんなところだな」

「……それ、全部調べるのは大変そうだね、ごしゅじん……」

「そうだな。

 何か手がかりがあれば進展すると思うんだが……」

「この周辺よりも外にそういった場所はあるのですか?

 百年程度でも天に聳えるような大樹はあると思いますが」

「世界地図はもちろん、周辺地図でさえも大まかにしか書かれていないんだ。

 正直、リージェの大樹も冒険者ギルドでは聞かなかったくらいだし。

 そもそも1000年も前になるから、現存していない可能性も高いと思うよ」


 それほどの年月を重ねていけば、建造物も残っていないかもしれない。


 ましてやこの世界には魔物がいる。

 人の住まわなくなった場所を荒らすことも考えられるし、風化して倒壊しても不思議じゃないだろう。

 残念だが手がかりが途切れてる以上、ここから先には進めない。


≪……いや、あるかもしれない≫


「あるかもって、祭壇の場所に覚えがあるのか?」


 ほぼ水中の奥底で眠るように暮らしていた彼が知るとも思えないが、その推察と同時にある仮説が俺の脳裏に思い浮かぶ。

 そしてそれは、ある意味では最高の保存状態で残っているかもしれない。


「……そうか、湖底か」

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