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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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若々しく聞こえないが

 強力な魔法を使った影響か、脱力感を強く覚える。

 しばらくはゆっくり休む必要があるんだろうな。


 空を見上げるように大樹へ視線を向けると、薄桃色の花を全体に咲かせていた。

 とても美しい、どこか桜にも見える不思議な異世界の花。


 名前はなんて言うんだろうか。

 それとも、世界でも彼女だけの花なんだろうか。


 どこか淡い光を優しく放つような花を見上げながら、俺は言葉にした。


「まぁ、無事になんとかできたみたいでよかったよ。

 俺は枯れてる桜よりも、"美しく咲き誇る桜"が好きだからな」

「活力が戻るどころか、元気な頃よりもずっと若々しくなりました!

 サクラ、というのは聞き覚えのない名前ですが、お肌はつやつやぷるぷるで、しっとりもっちもちの20代の頃に戻ったようです!」

「……その言い方は、若々しく聞こえないが……」


 いまの言葉でさらに疲労感が溢れてきた気がする。

 これはここで一泊した方がいいかもしれないな。


「……それで、これからどうするんだ?」

「もしよければ、あなた方の旅に同行させて下さいませんか?

 視界に映る場所しか知らない私に、とても広大だと聞く世界を自分の目で見てみたいのです」

「元気になって思考もポジティブになるのはいいことなんだが、そもそもこの場所を離れられないからフリートヘルムさんの帰りを待ち続けていたんだろ?」

「そう、ですね……」


 しょんぼりとした様子を見せる女性に、そんな姿も取れるんだなと思えた。

 さてどうするかと考えたところで、俺に何かできるんだろうか。


 ……いや、ひとつだけ、それを可能にするかもしれない方法がある。


「そうだ!

 トーヤのインベントリなら、この大樹も入れられるんじゃない?

 マンドレイクの女性も入ってるんなら、きっと大丈夫だよ!」

「マンドレイクの女性、ですか?」


 首をかしげて訊ねる女性へ話し始める。

 彼女の想いを否定し、別の未来を彼女に託された時の話を。

 そして眠るように花の姿へ変え、俺のスキルの中で静かにいることを。


 静かに聴き続けていた目の前の女性は徐々に瞳を輝かせ、期待に胸を膨らませているのが手に取るように分かった。

 もし彼女を、いや、大樹をインベントリに入れられるなら、彼女は世界中を歩けるようになるかもしれない。

 ……俺の周囲のみ、という制限がつくことになりかねないが。

 そんな彼女に水を差すことになるが、それでも言わなければならない。


「俺もその可能性を考えたが、どんな影響があるかも分からないんだぞ?」


 インベントリの性能は未知数で、調べようがない。

 そこに彼女を突っ込むようなことは簡単にできないんだ。


 危険だと思える可能性がわずかにもあるんなら、そんな方法は試せない。

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