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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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稀にやって来るんだよな

 森を抜け、ようやく町が見えてきたのは、それからさらに3日後のことになる。

 とはいえ"子供の足で"という制限はつくから、これでも早い方だろうな。


 視界に捉えた美しい町並みが近づくにつれ、子供たちも心が躍っているようだ。

 平原まで出ているとはいえ、魔物や敵対者のいる可能性が高い場所では少々危険な傾向だと言えるが、この子たちの気持ちを抑え込むようにさせては息が詰まる。

 こういったことも、上手くメリハリをつけながら鍛えるのがいいだろうな。


「やっと町に着いたねー」

「でもたのしかった」

「そうだね、あたしも楽しかった!」

「森に入る前と比べれば、みんな別人に思えるくらい強くなったよ」

「ほんと!?」


 目を輝かせながら尻尾をぶんぶんと振るブランシェに肯定する。

 平原を歩いてるだけじゃ経験できないこともたくさんあったし、何よりもこの子たちに自ら学ぼうとする自覚が芽生えたのは非常に大きい。


 これがあるなしでは、成長速度に雲泥の差が出る。

 現に浅い森を行って帰ってくる程度でも相当強くなっているから、今後はあえて森を進むことを考慮してもいいだろうな。


 それにはまず防具と、この子たちに合った武器をしっかり装備させたいところだが、さすがに刀は置いてないだろうし、俺の方は諦めることになりそうだ。


 いや、防具の方も子供用のはないし、そっちも購入は期待できない。

 やはり迷宮都市にあるって噂の誰でも身に纏える防具を見つける必要があるか。

 あるのかどうかも定かではないが、手に入らないと決まったわけじゃないし、ダンジョンには魔導具もごろごろしてるらしい。

 装備を充実されるならあの場所が最適とも聞いてる。

 本格的にダンジョン攻略を視野に入れて修練するべきだろうか……。



 街門には3台の馬車が憲兵の審査を受けているみたいだな。

 とはいっても身分証と積荷をざっくり確認するだけなので、俺達が辿り着くころには町中へ向かっていたが。


 すれ違った御者や護衛冒険者たちに子供連れを心配されるかと思ったが、町から近いこともあって挨拶をされたくらいで済んだ。

 町から目と鼻の先になる平原なら安全だろうと思ったのかもしれないな。


 実際どの町の周辺も、たびたび冒険者や憲兵による魔物の間引きが行われているようで、基本的に視界に映る範囲に敵が来ないようにしているらしいし、こんなところに野盗の類はまずいない。

 憲兵が目を光らせている場所でたむろするような根性の据わったやつがいるなら、さすがに見てみたいもんだが。


 街門まで来ると、驚いた様子で中年の男性憲兵ふたりが話しかけてきた。

 気を遣いながら森から平原、そして街道へ出たので、見られてはいないはずだ。


「……まさか、ここまで歩いてきたのか」

「無事で何よりだが、子供連れで街道を歩くのはさすがに危ないぞ……」

「ここまでの道中ですれ違った馬車に乗車した人のほとんどに心配されたよ」


 口角を引きつらせながら俺の言葉を聞いていた憲兵の一人に身分証を見せた。

 微妙な表情でも仕事をこなす憲兵だったが、内心では色々と言いたいことがあるような顔をしているな。

 まぁ、俺が悪いんだから、そうなったらなったで受け入れるしかないんだが。


「通っていいぞ。

 無茶はほどほどにな」

「あぁ、気をつけるよ、ありがとう」

「いや、これも仕事だからな。

 ……稀にお前さんみたいなのがやって来るんだよなぁ……」


 どこか遠い目で空を見上げる中年憲兵に申し訳なさを感じながらも、俺たちは街門を通り、町へと足を進めた。

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