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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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仲間でライバルの家族

 浅い森を戻るように俺たちは進む。

 その足取りは軽く、経験を積みながらも歩く森の中はどこか心地良かった。


 女性と出会ってから3日が経過しているが、今回は多くの魔物と遭遇した。

 そのどれもがボアやディアといった、これまで戦ってきたものと同じだが、度々戦い方を変えながら実戦経験を積むこの子たちに頼もしさを感じていた。


 そして戦いを終えると、決まって彼女達は話し合いをするようになった。

 はじめは他愛無い内容だったが、それも徐々に変化を見せ、4日目となる今日は随分としっかり話ができているようにも思える。


「――でね、ここでブランシェが魔物に突っ込んじゃうと、フラヴィとの位置が離れすぎちゃうと思うんだ」

「なら、アタシはもう少しフラヴィと一緒がいいね」

「それならふらびいも、まにあうとおもうの」

「最初の一撃なら魔法で牽制できるけど、ブランシェもフラヴィも左右の移動が早いし、後ろから魔法を撃つと危ないでしょ?

 だから今度からは魔法を撃つ時に声をかけようと思うんだ。

 魔法は真っ直ぐ飛ばすから、あたしとの位置も気をつけてほしいの」

「じゃあアタシもフラヴィも、エルルお姉ちゃんから見て真っ直ぐの場所に立たないようにする?」

「でもあまりはなれると、まものがおねえちゃんのところにいっちゃうの」

「そこはあたしでも対処ができるようにしないと危ないから、そんなに気にしなくていいよ。

 いざって時は強力な魔法を近距離で放てるし、大丈夫だと思う」

「じゃあ次は、少しだけ横に広がって戦ってみようか」

「うんっ」

「そうだね!」


 ここ2日、俺はこの子達の話し合いに口を挟まず、様子を見守っていた。

 もちろん危険な行動と思われることにはしっかりと助言をするが、教わるよりも自分で何かを感じ取り、学んだ知識の方が遙かに有意義だ。

 それをこの子たちは率先して学習しようとしている。


 これは確実にこの子たちの力になる。

 自らが学ぶ意思を持たなければ、そう時間をかけずに成長は止まる。

 その点、この子たちは間違いなく強くなれると実感できた。


 それでも危ないと感じればいつでも俺が出られるようにしているが、その心配は杞憂に終わるかもしれないな。

 そう思えるほどに3人は、このたった数日間で劇的に強くなっていた。


 これなら迷宮都市攻略すら視野に入るかもしれない。

 あの場所は階層を変えるごとに敵が強くなると聞いた。

 本格的にダンジョンへ潜れば今よりも遙かに強くなれる。


 それこそ野宿を楽しみながら過ごせるこの子たちなら、何日も地下へ潜ったまま訓練に励めるし、一気に強くなることも可能だろう。

 それまでは事前準備として森での修練を続ける方がいいかもしれないな。


「よし!

 今回も安全に魔物を倒せたね!」

「うんっ」

「そろそろ2匹同時に戦ってみたいね」

「あたしはまだちょっと怖いけど、ふたりと一緒なら何でも倒せそう!」


 クマの魔物であるベアを危うくなく倒した3人は、それぞれの個性を活かしながら連携を取れるほどの成長を見せていた。

 これは数日間の訓練で身につくようなものではない。

 まず間違いなく3人が互いに高め合っていなければ、これほどの成長はしない。


 仲間でライバルの家族、か。

 いや、家族だからこそ頑張れるんだ。


 これには俺も実感がある。

 誰かのために、それも大切なひとのために技術を磨こうとすれば、いつも以上に頑張れる。

 それは時に、ありえないと周りから思われるほどの爆発的な急成長を見せる。


 この子たちも今、そんな状況なんだろうな。



 茜色が差し込む浅い森はとても綺麗で、どこか幻想的にも思えるような光のカーテンを見ながら、俺はこの子たちの成長振りに嬉しさが込み上げてくる。


 そろそろ食事の用意をしないといけないなと思っていると、3人の方から声が届いた。


「ごしゅじんー、おなかへったー」

「わかったわかった。

 それじゃ、夕食にするか」

「わーい!

 今日もいっぱい頑張ったからお腹空いたね!」

「うんっ、ふらびいもおなかぺこぺこ」


 楽しそうに話しながらこちらに歩いてくる子供たちに頬を緩めながら、さて今日は何を作ろうかとこの子たちが笑顔で食べられるものを考えつつ、俺はインベントリに入れてある食材に視線を向けた。

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