姉で妹で友達で家族
ブランシェの喜ぶ姿を思いながら考えていると、複雑な声色が耳に届いた。
「……ぶらんしぇ、おっきくなりすぎ……」
「えへへー。
これじゃどっちがお姉さんか、本当に分かんないね?」
「ぅぅ……ふらびいもおっきくなる……のかな……」
そう思いたくなる気持ちも分からなくはない。
それほどにブランシェは急成長を見せていた。
不安げな表情を戻せないでいるフラヴィに、俺は優しく声をかけた。
「大丈夫だよ。
フラヴィはゆっくり成長しているのかもしれないだろ?」
「……うん」
俺の言葉も、今のこの子には伝わりにくいほどのショックを受けていた。
さすがにブランシェみたいな急成長はしないだろうし、あの力を受け継いで人の姿を取れたようにも思えるから、もしかしたら人と同じ成長速度になっている、なんてこともありえるかもしれない。
……だとすると、この子にとってはさらに衝撃的な話になる。
これは確実に判明するまで言葉にはできないな……。
だがもうひとり、フラヴィとは違うショックを受けている子がいた。
「…………あれ? あたし、お姉さん……だよ、ね?」
「ブランシェとしては、エルルはお姉さんなのか?
それとも急成長したことで妹になったのか?」
実に興味深いと思える俺としては、それについて聞いておきたいところだ。
困惑するエルルはこの子にとってどういった認識になるんだろうか。
ごくりと喉を鳴らすエルルに緊張が走る。
ブランシェの言葉次第で、彼女の今後が決まるようなものだ。
固唾を呑んで見守る俺たちに、ブランシェはきょとんとした表情で答えた。
「エルルお姉ちゃんはエルルお姉ちゃんじゃないの?」
「よっし!」
両手を胸元で強く握りこむエルルに突っ込みたくなるが、この子のために口をつぐむ俺だった。
「よくわかんないけど、どっちかって言えばフラヴィもお姉ちゃんだよね」
「そうなのか?
いや、確かにそうかもしれないな。
生まれた時期は分からないが、フラヴィの方が成長していたように思える」
「ふらびい、おねえちゃんかもしれないけど、ぶらんしぇとはかぞくなの」
「だねー。
アタシもそう思ってるよ。
フラヴィはお姉ちゃんで妹で、友達で家族なんだよ、ごしゅじんー」
「そうか」
ふたりの言いたいことは伝わったよ。
だからこそあんなにも仲が良かったんだよな。
初めから一緒に走り回ってたくらいだし、何も気にすることはなかったんだ。
……と、俺は思うんだが、エルルはどう思ってるんだろうか。
「お姉さんの威厳は保たれた。
これからも頑張ってお姉さんするぞ、むふふっ」
ものすごく楽しそうだから放っておくか。
若干良くない気配も漂ってる気がするが、そのうち収まるだろ。




