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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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都合のいい理由の方が

 しょぼくれたブランシェがいつものような元気を取り戻した頃、浅い森にも太陽が昇りつつあった。


 どっと疲れたような疲労感が俺を襲う。

 今回の件は精神的に厳しかったな。


 とりあえず、また人の姿を取ったブランシェに服を着せる。

 大人の女性服を購入しておいて良かったと言いたいところだが、どうにもこの子にはひらひらしたものは苦手のようだ。

 確かに動き辛いとは思うし、ブランシェの性格から考えれば納得する。

 さて、どうしたもんかと考えたところで、あとはひとつしかないんだが。


「あれならブランシェも着やすいんじゃないかな?」

「そうだな。

 サイズも大きめで用意してるし、それ以外だとローブしかなくなるな」


 だが、下着にローブ姿は世間体にも良くないし、本人に気に入られると困る。

 こんなことならもっと服を買い込んでおくべきだったか。


 しかし、こんなことになるとは、さすがに想定していなかった。

 人の姿になれる可能性は考えてはいたが、まさかこんなに大きく成長するとは。

 エルルと同じくらいの年齢になると予想してたが、この子は思っていた以上に早熟みたいだ。


 見た目に若さは残るが、十分大人の15歳と言い張ることができるだろう。

 まぁ実際には1歳にも満たないわけだが、ある意味では魔物の特権だな。


 身長は160センチちょっとか。

 痩せ型ではあるが、バランスのいい体系に思える。

 これならある程度筋肉をつければ格闘術も視野に入れられるな。


 それに身分証には種族名が書かれないから、これだけ成長していれば大人と称して冒険者登録ができるだろうし、人として町で生活することも問題ないはずだ。

 人間社会に溶け込むフェンリルってのも面白いが、もしかしたら同じように生活している魔物も……いるわけないか。


 これもすべて、俺のユニークスキル"特殊成長"が原因だ。

 スキルがあれば他の子にも影響が出る可能性も考慮していたが、まぁ人の姿になれることは特にデメリットを感じない。

 むしろ都合のいい理由の方が多いと思えてしまうのも妙な話だな。


 だがこれで魔物OKの店を探さなくて済むし、あの大きさの狼を町で連れ歩くのは非常に目立つ。

 顔立ちも変わりつつあるブランシェを見て、怖がる人も出てくるかもしれない。

 食べ歩きもできるようになってるから、この子にとっても喜ばしいことだ。


 何よりも人の姿なら、この子の気持ちもしっかりと理解できる。

 ……なんて、ブランシェの想いを真っ先に断った俺が言う言葉じゃないな。



「どうだ?」

「んー、ちょっときつい」

「動けるなら今はそれで我慢してくれ。

 町に行ったら真っ先にブランシェの服を買うから」

「ほんと!?

 アタシの服も買ってくれるの!?」

「あぁ。

 サイズに合ったものだけじゃなくて、ブランシェの着たい服を買ってあげるよ」

「やったぁ!」


 右手を挙げて喜ぶブランシェの首にかけられたチョーカーが大きく揺れた。

 思えば首周りは極端に小さくなってるし、もうヨレヨレだな……。


「チョーカーも新しいのを買おうか」

「やだ! これはごしゅじんに買ってもらった宝物なの!」

「でもヨレちゃってるぞ?」

「いいの! これつけるの!」

「そうか」


 取られると思ったのか、両手で隠すようにチョーカーを護るブランシェ。

 それだけ大切にしてもらえているのは、買った俺としても悪い気分じゃない。


 まぁ、この子も色んなものを身につけられるようになってるし、欲しいものも町に行けばたくさん見つかるだろう。

 その全部を購入することは教育上良くないが、どうしても欲しいものは買ってあげようと思う。

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