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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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質を高めた魔法が意味するもの

「……そういえばさ」


 ふと何かを冷静に思い出した様子でエルルは訊ねる。

 それについて説明していなかったことに、今更ながら気がついた。


「魔法の質を高めて粗をなくしたことって、どんな意味があるの?」

「そういえば、説明してなかったな。

 分かりやすいのはエルルの使う"小さな火の衝撃スモール・ファイア・インパクト"だな。

 魔法壁としても使えるが、粗をなくすことでその効果をより高められる。

 それはつまり、魔法が持つ本来の耐久力も極端に増すって意味になる」

「……ということはさ、弱い魔法でもすっごく硬い壁が作れるってこと?」


 首を傾げながらもエルルは訊ねるが、その考えは概ね合っている。


「そうだ。

 もしそれをさらに強力な魔法、たとえば上級に位置する威力を持つ魔法で作り出したらどうなると思う?」

「…………誰にも砕けないし、他の魔法にも負けないような強力な盾が作れる?」

「その通りだ」


 それを作り出せれば、文字通りの鉄壁で仲間を守ることができるだろう。

 新たな魔法の誕生とも言い換えられるほど強固な盾を発現させられる。


 実際には盾に限定されず、剣としても効果を見せるはずだ。

 そうなれば攻守ともに最高の魔法を体現することになる。


 この利点は何も"小さな火の衝撃スモール・ファイア・インパクト"のような魔法だけじゃない。

 水圧ですべての魔法を弾き飛ばし、相手にダメージを与えることも可能だ。

 当然、風や土属性でも同じことができると俺はどこか確信している。

 質が高まった魔法には、そう思えるだけの可能性が秘められてるんだ。


 マナの通りが半端な場所はもろく、逆に質を高めれば硬くなる。

 単純な話ではあるが、これも俺が異世界人であることと、様々な世界の物語を創作物として知っているから出てくる柔軟な思考なのかもしれないな。


 これまで何千何万、いや何億年という途方もないほどの歳月がこの世界でも流れているはずだ。

 人間が登場してからも切磋琢磨を繰り返し、現在のような魔法文明を構築していったんだろうけど、何千年も続くだろう深めた知識と修練法が正しいとは限らないってことなんだろうな。


 だからこそこの世界の住人は弱く、魔物を倒してレベルを上げただけで強くなれると勘違いをしている。

 たしかに能力値は上昇するが、そこに技術を持たなければ何の意味もない。

 そのことに気づいた者は少ないと思えるから、それを感じ取るように知った者は少数しか存在していないか、伝説とまで言われるような他の追随を許さないほどの強さにまで己を高めた歴史上の人物だけなのかもしれないな。


 聖女レリアも俺と似たような考えに辿り着き、己を高め続けたのか?

 だからこそ彼女の逸話は、今現在でも謳われるほど有名なんだと思えた。

 彼女を崇拝するように信じているフランツには悪いが、こういった話は尾ひれがつくもんだし、実際にはそれほどすごい人物ではなかった可能性もなくはないと俺は思ってるが。



 魔法の話は推察の域を出ないことも、子供たちにしっかりと伝えた。

 もしかしたら、そんなことはできないかもしれないことも。


「……魔法の質を高めるのには、そんな意味があったんだ」

「あくまでもまだ俺の推察だが、これは正しいと思うよ」


 攻撃魔法は物理的に干渉する力として発現しているからな。

 むしろ強化された魔法を貫くのは容易じゃなくなるはずだ。

 相手の魔法に押し負ける心配が改善されるだけでも大きい。


 これも俺独自の考え止まりである可能性も十分に考えられるが、不思議と間違っているとは思えないんだよな。

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