肌で感じ取っているんだ
まるで自分だけ置いて行かれた気分になっているんだろう。
そう思えるほどの成長をフラヴィとエルルは見せている。
とても寂しそうな、哀愁が漂う気配をこの子はその身に宿していた。
この子はそれを自分との差として肌で感じ取っているんだ。
最近ではふたりの修練を外側から眺めることが増えた。
もちろん3人で修練に励むことは多いし、ブランシェがふたりと明確な差をつけられているとは思わない。
フラヴィの木剣を危うくなく華麗に避け、エルルの魔法をまるですり抜けるように対処ができるこの子は、身体能力だけじゃなく戦闘的なセンスが抜群に優れてことは疑いようもない。
これは間違いなく高位種族であるフェンリルの特性だろう。
いや、この子たちの種族は最上位の魔物とも呼ばれているそうだし、あのブランディーヌの子なんだから強さはそこいらの魔物とは一線を画すどころか、圧倒的な強さで勝利を掴み取れるだけのポテンシャルを持っている。
そのことにこの子はまだ気がついていないんだろう。
それだけの潜在能力を、フラヴィとエルルは持ち合わせないかもしれない。
じっくりと焦らずに修練をし続ければ、必ずブランディーヌかそれ以上の強さにまで到達できると確信するだけのものをブランシェは持っているんだ。
しかし、それもこの子が成長し、大狼となったらの話になる。
ふたりが見せた技術の急成長に焦る気持ちも分からなくはない。
だがこの子は、もうひとつ大きな力を持っているはず。
ブランディーヌが使っていた水属性魔法と思われる力だ。
その力をブランシェも所持していると俺は確信していた。
修練を続ければ、強力な氷を生成して放つこともできるだろう。
そうなれば一気に戦闘の幅が広がる。
近接戦だけじゃなく、中距離にも対応ができるのはこの子の強みになるはずだ。
それを安定させられるのなら、敵に接近せざるをえなかったブランシェでも様々な戦い方が可能となるだろう。
――だが。
成長は早いが、未だその体はしっかりとしたものとは言えない。
それも急成長すれば話は変わってくるから、フラヴィとは違う早熟さを考えれば気にならないと思えるが、彼女自身に思うところがないわけじゃないんだろう。
この子なりにどうすれば強くなれるのか、真剣に考える時間が増えつつあった。
そんなブランシェに俺がしてあげられるのは、可能性を増やすことくらいだ。
恐らくはそれを伝えただけで改善できるはず。
そう思えた俺は、ブランシェを呼び寄せる。
「ブランシェ、おいで」
「わぅ!」
勢いよくこちらに走るブランシェ。
少し前のブランシェなら瞳を輝かせながら遊んで遊んでと言っていたが、どうにもふたりの急成長する姿に触発されているんだろうな。
強くなる秘訣を教えてもらえると感じさせる瞳をしていた。
残念ながら、この子の想像とは少し違うことを話すんだが……。
俺の足元で笑顔を見せる子の頭を優しくなでると、目を閉じて喜んだ。
色々と考えることも多いだろうが、それでも俺の話が何かの切欠になるだろう。
うまくいけば、現状を打破できるだけの力に昇華させられることも考えられた。




