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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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お姉さんとしての意地

 修練をしながら、俺たちは次の町を目指す。

 乗合馬車であれば3日で着くが、ゆっくりと歩きながら進む旅はとてものんびりとしたもので、このペースなら後2日は修練に時間を費やせると予想していた。


 しかし、笑顔を絶やさない日々は俺にとっても最高に楽しい。

 何よりも日に日に強くなっていくこの子たちに俺も触発され、これまで以上に集中して修練に励んでいた。


 あれから2日しか経っていないが、エルルは"小さな火の衝撃スモール・ファイア・インパクト"をより強固に、その完成度を高め続けた。

 フラヴィに見てもらいながらの修練で徐々にマナの粗も小さくなり、魔法壁をダガーで押さえ込むことしかできないほどのクオリティーにまで到達できたようだ。


 何度も何度も霧散された魔法にへこみながら、それでも立ち上がり修練を続けていたのは、お姉さんとしての意地からきているんだろうな。

 動機はどうあれ、彼女にとってはそれが励みになったみたいだ。

 ふたりはこの2日間で劇的に強くなっていると実感した。


 しかし、課題も多い。

 戦闘となれば安定した戦いができるフラヴィは、未だ体力的な危機感を覚える。

 短期での戦いは問題ないが、長引くと一気に形勢が変わるほどの危うさがある。


 逆に体力と身体能力は群を抜いて高いブランシェだが、技術面では見劣りする。

 それを補ってあまりある体の強さはあるが、それでも戦闘を任せるのは不安だ。


 エルルは魔法こそ完成度が高く、多様性のある戦い方ができる。

 だが体力的な未熟さと、敵に近づかれた際の対処法を含む判断力が拙い。


 当然、この子たちはまだまだ子供だ。

 修練を本格的に始めたのも最近だし、戦うことに関しては経験も少ない。


 とはいえ、この周辺の魔物であれば3人に任せられるくらいは強くなっている。

 試しに街道で遭遇した単体の魔物と何度か戦わせてみたが、さすがにゴブリンやボア、ディア程度なら危なげなく戦うことができるようだ。

 ブランシェは前衛フラヴィは中衛、エルルは後衛での行動を自然と取っていた。


 その中でも光るのはフラヴィだ。

 技術面で俺の知識を手に入れてることもあり、攻撃重視のブランシェをサポートしながら後衛で魔法を放つエルルにもしっかりと気を配っていた。

 これは、生まれたての子が体得するにはありえないと言い切れる技術になる。


 文字通りの中核をなしているフラヴィがいるだけで、パーティーの安定感が目に見えて高くなっていた。


 人であるエルルの身体能力が高くなるのに時間がかかるのはしかたがない。

 しかし魔法で身体能力を高められるのなら、その強さは劇的に進化するだろう。


 フラヴィの体力のなさも、成長していけば解消されるかもしれない。

 魔物であるが故に急激な変化を見せる可能性だって考えられる。

 ……問題はブランシェか。


「……わぅ……」


 寂しそうに、聞こえないほど小さく言葉にするブランシェ。

 さすがにこの子は飛んできた魔法を霧散させることはできない。

 ダガーのような武器を自在に扱えるフラヴィとは違い、ブランシェは生身で魔法に当たることしか方法がないのだから、それも当然だ。


 身体能力はずば抜けてふたりよりも高いが、狼である以上技術面で見劣りする。

 以前は真逆のことをフラヴィに感じていた俺だが、こうも性格や得意分野が違うと教え方も色々と変えていかないといけないな。

ボアはイノシシの魔物、ディアはシカの魔物です。

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