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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第九章 空に掲げた手
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複雑な心境

 バルヒェットを旅立って3時間ほどがすぎた。

 北の町を目指し、俺達は徒歩で街道を進む。


 当然、これにも理由がある。

 乗合馬車での移動はとても快適だが、訓練する時間を取れないのが難点だ。

 人前ではあまり言葉にできない修練法や見せられない訓練法があるので、今回は乗合馬車を利用せずに次の町を目指していた。


 そのひとつが気配察知だ。

 これは俺が教えれば、この世界の住人でも覚えることのできるスキルになる。

 口の軽いやつの前で話してしまうと爆発的に知識が世界へ広まる可能性も考えられる以上、なるべく他人がいる場所では言葉にしない方がいい。


 まずはこの強力なスキルの体得から修練を始めたが、魔物であるフラヴィとブランシェは早々に覚えられたようだ。


 感覚というよりも本能で気配を察するのに長けているブランシェはもとより、フラヴィは剣術や体術だけじゃなく気配察知に関してもすでに体得していた。

 それも俺が不用意に力を込めて卵を孵化させたことが原因だと思われるが、こういった命に直結するようなスキルは覚えておいて損はない。


 人間であるエルルは体得に苦労していたが、毒事件で"よくない"と感じた時のことを思い出させると、問題なく覚えられたようだ。


 あれは怨念にも似た負の感情、妬みや恨みといったものだった。

 まるでこびりつくような強い悪感情を感じ取れるほど強烈に発していた。

 だからこそ人の子の、それも幼い子であるエルルでも理解できたんだろう。

 いや、この子もまたどこか他の人とは違って感覚的に優れていると思えた。


 ひとつ気になるのは、ブランシェが手にしたものは技術を覚えたばかりのディートリヒ達とは違って、気配察知の性能がかなり高いことだろうか。

 やはり魔物としての勘のようなものが相乗効果として作用しているのか。

 これは悪いことじゃないし、それほど気にすることでもないが。


 フラヴィはすでに100メートルほどの気配をはっきりと知覚できるようだ。

 技術の全て受け継いだわけではないが、それでも相当の技術力を持っていた。


 この子はやはり実戦経験を積ませることで、劇的に強くなっていくだろう。

 頼もしいと思える一方でどこか寂しさを感じるが、この子の安全が最優先だ。

 基礎修練も継続しつつ、模擬戦のような訓練を始めてもいいかもしれない。



 続けて冷静な行動と対処ができるようになる、精神力を学ぶ訓練に入った。


 これについてもフラヴィとブランシェのふたりは体得に時間がかからなかった。

 出会った頃は落ち着きのなさそうなイメージを持っていたブランシェだが、最近では随分と心も成長したようで冷静に行動ができるようになりつつある。

 フラヴィは元々慎重に行動していたし、それほど難しいことではないみたいだ。


 残るはエルルだが、よくよく考えれば10歳ほどの子供が体得するには難しい。

 そう簡単に身につくような技術でもないし、ふたりが特殊なんだと話すも、やはりこの子としてはかなり複雑な心境のようだな。


「……あたし、お姉さんなのに……。

 気配察知も冷静に行動するのもすごく難しいよ……」


 涙目でしょぼくれながら呟くエルル。

 確かにこの子が手にした気配察知の範囲はとても狭い。

 集中力も続かず、冷静に行動することもまだ難しいようだ。


 だがそれも、年齢を考えれば体得してるだけですごいことなんだと俺は伝えた。

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