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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第二章 後悔しないのか
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武勇伝の多い

 視線を剣に戻しながら、俺は尋ねた。


「この剣を知ってるんですか?」

「あぁ。そいつは10年くらい前に、ある貴族邸から盗まれたものらしい。

 今でも捜索依頼が高額の賞金つきでギルドに張り出され続けているんだよ。

 あいつらが盗んだとは思えないから、盗賊同士で襲いあったのかもしれないな」


 レリアとは、別名"竜殺し"とも言われている女傑だ。

 200年前に実在した人物で、この世界では伝説の勇者とさえ言われている。


「一振りで山を切り崩すとか、ドラゴンを一撃で両断したとか。

 色々と武勇伝の多い英雄の剣だな。まさかこの目で拝める日が来るとは……」


 しみじみとディートリヒは話すが、これでもかと瞳を輝かせている男がいた。

 どうやらフランツは彼女に憧れて冒険者を目指したらしい。

 さすがに竜を倒そうとまでは思っていなかったようだが。


 この世界には様々な魔物がいる。

 それは動物にも言えることではあるが、中でも魔物は多種多様で、ソンビやスケルトン、レイスといったアンデッド系モンスターもいるらしい。

 あまり深くは考えたくないが、冒険者を息絶えたまま放置すると悪霊が取り憑くように体へ入り込み、アンデッド化してしまうようだ。


「生前に抱いた無念さが悪しきものを呼び寄せ、悲しい存在になるのですよ」


 エックハルトはとても悲痛な面持ちで答えた。

 そのために祈りを捧げたのだと彼は続ける。


 たとえ肉体がなくとも、ゴーストのような実体のない魔物になってしまう。

 たとえ肉体があっても、ソンビやスケルトンとして動き出す。

 本人の想いとは無関係に人を襲う存在として魔物に悪用される。


 そういった想いもあって、彼は冒険者をしているのかもしれないな。


 救われない魂をほんの少しでも救えるように。

 可能であれば、次の生は穏やかに過ごせるように。



 数多く存在する魔物だが、一際危険な存在として人々から恐れられるのが竜だ。

 獰猛な魔物で縄張り意識が強く、住処を荒らそうものなら灰にされるらしい。

 人里離れた奥地や最果てのような場所にいて、まず遭遇したりはしないが。


 何百年とも、何千年とも言われるような長寿の存在だとディートリヒは話した。


「……近付きたくない相手ですね」

「まぁ、ドラゴンは伝説の生物とまで言われているからな。

 普通に冒険者をしていれば、まず遭う機会なんてないだろうさ」

「……出遭ったら確実に殺されるぞ、気をつけろよトーヤ……。

 奴らは人間を咀嚼するだけして、つまらなそうにペッと吐き捨てるんだぞ……」

「またフランツさんは……」

「とても知識が高いと聞きますから、私は興味が尽きないですね」

「お、おい、冗談じゃないぞ!? 嫌だぞ俺はっ!

 遭いに行くならエックハルトひとりで行けよ!?」

「安心しろ、フランツ。本気で遭いに行くつもりなら、俺も全力で止めてやる」

「ディートリヒさんまで……」


 楽しそうに笑い合う俺達と、半分涙目のフランツだった。

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