光の当たる場所
「トーヤぁ! だいじょうぶー!?」
「あぁ、大丈夫だ、問題ない」
まさか異世界に来て岩山を登る羽目になるとは、さすがに思っていなかった。
心配そうに俺を見上げる子供達だが、こんなことをあの子達にはさせられない。
「……この辺りだったか」
ようやく光の当たっていた場所に辿り着いた。
20メートルほど上ったが、やはり目印と思われるものはない。
くまなく岩壁を調べるも、人為的に作られた場所は発見できなかった。
どこを見ても岩肌。
探している場所が違うのか?
それとも手がかりなんて、そもそも存在しないのか?
「トーヤぁ! 何かあったー?」
「いや、何もないみたいだな」
「ばしょ、ちがう?」
「どうだろうね。
これだけ広い岩山だし、それもあるかも」
「わぅ……」
どこか寂しげな声が耳に届く。
何気にブランシェも楽しみにしていたんだろうか。
あまりこういったことには興味ないと思っていたが。
一旦下りるか。
どうやらここは違う場所みたいだし、もう一度窪みから探してみるか。
そんなことを考えていると、ちろりと小さなトカゲが岩壁を登った。
こんな場所にも生き物がいるんだな。
まぁ、砂漠にもいるくらいだし、不思議なことじゃないか。
「…………なんだ?
トカゲが、消えた?」
いつの間にか、可愛らしく歩いていたトカゲを見失った。
一瞬目を離しただけなんだが、いくら暗いとはいっても消えるようにいなくなることなんてあるのか?
注意深く周囲を調べる。
しかし、トカゲの姿は見当たらない。
視点を変えて、岩壁に張り付くように確認する。
「……まさか、こんな、ことが……」
表面上はまったく違和感がなかったが、角度を変えて見てみると岩壁に手のひらが入る程度の小さな窪みがあることに気がついた。
これだけ近くで、それも下から覗き込まなければ見つからないようになってた。
これは確実に人為的なものだ。
でなければ、こんな形の穴が綺麗に空くわけがない。
インベントリからカンテラを取り出し、穴の奥を確認する。
とても狭い窪みだが、50センチほど先に何か四角いものが見えた。
岩、いや、これはまさか……。
穴の中に手を入れて、でっぱりに指をかける。
「……マジか……。
まさか動くのか、これ……」
強めに引くと、ガコンと何かがはまる。
下の方で、重々しい石を引きずるような音が周囲に響いた。
「わ!? と、トーヤ!? なんか開いた!」
「先に進んじゃだめだぞ。
俺が戻るまで待ってるんだ」
「うん!
……っていうか、トーヤと一緒じゃないと、入りたくない……」
「ちょっとこわいね……」
「うん……」
「わぅ?」
首を傾げるブランシェの姿が頭に浮かぶ。
すぐに戻りたいところだが、この高さを飛び降りると少し危ない。
他に目立つ仕掛けもなさそうだし、まずはみんなと合流するか。
だが、まさかトカゲに助けられるとは思ってもみなかったな。
これも何かの導きなんだろうか。
いや、まだ罠の可能性も高い。
油断はしない方がいいだろうな。




