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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第八章 オ・ブ・デュ・デジール
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鑑定結果は

 取り乱しながらも倒れこんだ男性に近寄る女性。

 その表情は焦りを通り越して発狂しそうなほどだった。

 あまりのことに店内はどよめきと戸惑いの気配であふれる。


「全員この店を出ずに、その場で待っててくれ」


 その言葉に驚きながらも動く気配のない客に安堵する。

 ここでパニックにでもなれば、店の外に出て行ってしまう。

 そうなればさらに面倒なことになりかねない。


 俺は倒れた男性に近づき、スキルを使った。


 鑑定結果は黒。

 残念ながら、店内にいる人たちと同じだと思われた。

 効くかどうかはわからないが、今も苦しむ男性にキュアをかける。


 これでダメなら薬を買いに行くしかなくなる。

 しかし、その心配は杞憂に終わりそうだ。


 血色が良くなったように見えると、そのまま眠りに落ちたようだ。

 黙って見つめていた女性店員は強めの口調で訊ねてきた。


「ど、どういうことでしょうか!?」

「……顔色が良くなったな。

 どうやらキュアが効いたみたいだ」


 効果が強いものを取り込んだのか、それとも彼自身の免疫力の差なのか。

 医者でもない俺に判断できることではないが、治療行為は可能みたいだ。


 俺は立ち上がり、不安気な様子でこちらを見つめていた客へ話した。


「全員、冷静に聞いてくれ。

 店内の飲食物に毒が混入されている。

 毒の影響はこの男を見れば想像できたと思うが、気分が悪くなった者を優先して全員にキュアをかけるから、そのつもりで動かずに待機しててくれ」


 俺の言い方も少し悪かったみたいだな。

 これじゃ全員毒に侵されてると言っているようなものだ。


 内心では俺も相当焦っているのか。

 もう少し思慮深く行動しなければならないんだが、料理に毒が混入されるなんて事態、想定もしていなかったことだ。

 ここに焦るなって方が無茶だといえるんじゃないだろうか。


 だが俺の言葉に驚いたのは客と店員だけじゃなかったようだ。

 厨房からそれを聞きつけ、店主と思われる男性がすっ飛んできた。

 中々の強持てだが、おたまを持ったエプロン姿に笑みがこぼれそうになる。


「おいおいおい!

 変な言いがかりはやめてくれ!

 俺はそんなことしねぇよ!」

「まともな料理を作れるあんたが犯人だとは最初から思っていない。

 それに毒が混入された経緯よりも、まずは治療が最優先だ。

 原因を究明するのは、そのあとでもいいだろう?」

「……ま、まぁ、確かにそうだが……」

「この中にキュアが使える者がいれば、手伝ってもらいたいが?」


 周りを見回すが、どうやらいないようだ。

 冒険者でもなければ覚えることもない魔法だ。

 しかたないと諦めるしかないか。


 顔色の悪い客から優先し、感染した全員にキュアをかけ始めた。

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