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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第二章 後悔しないのか
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今回だけに

 終わってみれば、案外あっけないものだ。


 練度の低いと言わざるをえない腕力に頼った剣技だったな。

 ごり押しで勝てると思われたのは失笑しか出ないが、相手は所詮盗賊だ。

 元冒険者だろうが、その程度の実力と知能しか持ち合わせていないんだろうな。


 そんなことを考えながら、首根っこを掴んだ男を座り込む3人へ放り投げた。

 片手で大人を投げ飛ばしたことに悲鳴を上げるが、知ったことではない。


 ディートリヒ達に視線を向ける。

 どうやら彼らも怪我することはなかったようだ。


 安堵していると、彼らは手下とボスを縛り上げていく。

 ぐるぐる巻きにするのかと思っていたが、捕縛の仕方があるらしい。

 手を使わせないことや、移動を阻害する縛り方が必要なのだとか。


 逃げられても厄介事にしかならない。

 最悪の場合、自分だけじゃなく仲間の命すらも危うくなる。

 所持品をしっかりと確認するのも大事なんだと教えてもらった。

 こういったことも学んでおいた方がいいかもしれないな。


「ふぅ。なんとか無事に終わったな」

「ああ! 俺達の勝利だ!」

「これでロランスさんも、安らかに眠ることができるでしょうか……」

「そうですね。私はそう信じたいです」


 とても悲しそうな声で言葉にしながら遠くを見つめるエックハルト。

 彼は神官という立場上、どこか3人よりも違った目線で今回の事件を捉えているのかもしれない。

 彼女の無念さや行き場のない怒りを、誰よりも強く感じているのだろう。

 申し訳なさを含ませたようにも思える彼の静かな声は、物悲しく洞窟内に響く。



「おしっ! そんじゃ、お宝回収といくかっ」

「そうだな」


 一際明るい声をあげるフランツに続くディートリヒ。

 チームには彼のようなムードメーカーが必須なのかもしれないな。


「ここから先はどうすればいいんですか? 町で憲兵に報告でしょうか?」

「それについての話もしとくか。

 こういった場合、壊滅させた盗賊団が所有する宝の占有権は俺達にあるんだ。

 そのほとんどはギルドへの報告義務が発生しない。

 まぁ、いちいち報告されてもギルドが面倒なだけってのが本音らしいが」

「ま、そんなこともあって、盗賊狩りをする冒険者もいるくらいなんだぞ」

「僕達は調査を主に活動していますし、捕縛依頼は今回だけにしたいですが……」

「私もそうしたいところですね。今回は場合が場合で引けませんでしたが、できるなら調査依頼で慎ましく冒険を続けたいです」


 深くため息をつくライナーとエックハルト。

 確かにその通りだなと俺も思う。

 まぁ、こんな連中がごろごろいるなら、それなりに対応策を取った方がいいとは思うが。


「特殊なアイテム以外は基本的に報告しなくていいんだが、中には少々厄介なものを抱えているケースがあってな」


 その特殊なアイテムを抱えていると、面倒事に巻き込まれることがあるらしい。

 いわゆる貴族が関わる物が出てきた場合の交渉だと彼は話した。


 指輪や装飾品など、貴族の家名が刻まれていたり細工が非常に緻密なものだったりと、一般的にもひと目でそれと分かる物だが、中には門外不出の書類を含む機密事項が書かれたものだった場合、読んだだけでも問題になることがあるそうだ。


「まぁ、お貴族様のお相手をするだけでも中々厄介なことになるケースが多い。

 貴族の多くは選民思想を持ってるし、そういった主義もなく平民と対等に交渉しようって思う貴族はかなり少ないと思うぞ。それこそ一握りだろうな」

「俺も正直、貴族と交渉するのはできるだけ避けたいな」


 ふたりの言葉に苦笑いしか出ないエックハルトとライナー。

 まぁ、俺も彼らと同じような顔になってる気はするが。


「まずは洞窟内を調査するか。

 奥にまだ残党がいるかもしれないからな」


 そう言葉にしたリーダーに頷き、縛り上げた盗賊どもに視線を向けず、俺達は洞窟の奥へと足を進めた。

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