散歩のついでに
この場で詳しく話すようなことじゃないんだが、それでも近くにあるはずの場所が気になるのも事実だ。
自然と会話がそっちに向かうのは当然だったのかもしれないな。
話のついでに、みんなが例の件をどうしたいかを聞いてみた。
「確か、ここから12キロくらい歩いた場所だっけ?」
「そうだな。
向かうとしたら明日になるが、どうする?」
「あたしは結構興味あるなぁ。
なくても楽しそうだし、お散歩のついでに探す感じでいいんじゃないかな?」
「ふらびぃも、いってみたい。
いろんなけしき、みたいの」
「わふわふわふっわふわふ、わふわふっ!」
「ぶらんしぇ、ぱーぱといっしょなら、どこでもいくって」
「そうか」
フラヴィと俺の間に座るブランシェの頭を優しくなでると、嬉しそうに瞳を閉じた。
この子は予想していたように、俺のことをそう思ってるみたいだな。
若干複雑ではあるが、わんこならそういった考えになるのかもしれない。
……っと、この子は狼だったか。
最近、わんこにしか思えなくなってたな。
まぁ、ブランシェはブランシェだ。
狼だろうが、わんこだろうが、家族には違いないんだが。
「それじゃあ、明日にでもその場所を探してみるか。
おおよその場所は聞いてるし、12キロならそう遠くもない。
時間がかかるなら野宿すればいいだけだから、気楽に行ってみよう。
見つかったらそれはそれで問題だが、結果をローベルトさんに報告したいしな」
「うんっ」
「わふわふっ」
「わくわくするねっ」
徳川埋蔵金みたいなイメージは拭い去れないが、興味は出てきた。
あれだけ手の込んだことをしてるんだから、何かしらの痕跡は見つかるかもしれない。
「そういえばローベルトのおじいちゃん、ソファー欲しいって言ってたね」
「ふかふかのそふぁー、あげたいね」
「わぅ?」
完全に寝ていた子は覚えていないようだ。
もし財宝が見つかったら、都市のような大きな町で高級家具の中でもかなりいいものを探して送るか。
配達となれば時間はかかるだろうけど、まだ定年退職には早いだろうし、問題なく受け取ってくれるはずだ。
というか、荷物の中でもソファーみたいな大きい物を配達してくれるのか?
多少無理を通してでも届けてくれるといいんだが、まぁそれも見つかってからの話になるな。
正直なところ、未だに俺は見つかる可能性が限りなく低いと思ってる。
これが誰かの墓の下に埋まってる、なんてことなら引き返すしかなくなるな。
エルルじゃないが、散歩のついでに世界を歩くのもいいかもしれない。
それも不安は拭い去れないが、怯えて行動を制限させるくらいなら堂々と歩いた方が色んな面でいいはずだ。
……この周辺に隠れてるなら、何らかのアクションを起こしてくるだろうしな。




