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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第八章 オ・ブ・デュ・デジール
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願うばかりだ

「しょ、少々こちらでお待ち下さい」


 目を丸くした女性職員の背中を視線だけで追った。

 そんなに驚くことなんだろうか。


 いや、デルプフェルト冒険者ギルドマスターからここのマスターへの手紙だし、かなり若い職員だったから先輩にどうすればいいのか対応を聞きに行ったんだな。



 バルヒェット冒険者ギルド内もデルプフェルトと同じような造りになっていた。

 建物を入って右側に依頼用の掲示板、正面に受付カウンター、そして中央から左は飲食できるスペースが設けられ、がやがやと賑わいながら食事を楽しむ人達で溢れていた。

 これは一般的なギルドの形だと聞いてるし、不思議に思うことでもないか。


 受付に来る前ちらりと横目にした掲示板に、目立った"特殊依頼"はない。

 いわゆる厄介な魔物の緊急討伐依頼や、盗賊などの捕縛依頼がそれに当たるが、これといったものが貼り出されていないということは、この周辺に留意するべき厄介事は現在確認されているわけではないんだろう。


 まぁ、そういったものは突発的にやってくるものだし、それだけで判断するのは危険だから、いついかなる時も対応できるように行動するのが理想的だな。



 特殊な依頼の中には、極々稀に凶暴な魔物が遠くから迷い込んだり、弱い魔物が大量発生したりすることもあるらしい。


 ブランディーヌの件もあるからな。

 正直なところ笑えない俺がいる。


 言葉が通じる相手ならいい。

 しかしそうはならなかった場合、冒険者が討伐に向かうことになる。

 それもその町を中心に活動する冒険者、もしくは、近隣の町から派遣されることもあるだろうが、非常に危険な魔物の討伐依頼に命をかけられるかと言えば、討伐を専門に活動している冒険者でも難しいと言える。


 ブランディーヌはあの時ブランシェを抱えていたし、逃げるしかなかったのかもしれないが、彼女は話のわかる魔物だった。

 もし仮に、あれほどの強さに近い存在が一方的に牙を剥いた場合、並の冒険者で対処ができるとはとても思えない。

 強固な外壁で囲われている城砦のような建造物であろうと、そんな魔物が放つ一撃すら耐えられる保証はないだろう。


 俺でさえ本気で攻撃すれば、外壁くらいなら真っ二つにできるだろうしな。

 この世界の冒険者でそれができるかはわからないが、表舞台に出てこない強者はいくらでもいるはずだし、力を振りかざすようなやつが出ないとも限らない。

 その辺りは十分に警戒をするべきなんだろうな。


 さすがにフェンリルと呼ばれた上位魔物がやってくる、なんてのはまずありえないんだが、彼女のように何らかの理由から住処を追いやられて移動するケースもないと断言できない以上、そういった危険性はどの町、いや世界中で言えることなのかもしれない。


 そんな危うい世界だとは思いたくないが、人里には下りてこないと言われるドラゴンが都市を襲うなんて事件も、頭の片隅には置いておくべきなんだろうか。


 マンガやゲームじゃお決まりの設定だが、それをリアルで体験したくはない。

 たった1匹のドラゴンが襲来しただけで町が落ちる可能性は非常に高いんだ。


 平穏な旅を望む俺としては、そうならないように願うばかりだ。

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