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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第二章 後悔しないのか
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対人戦

「……へぇ。いっちょまえに構えるのか。

 まさかとは思うが、俺らとやるつもりか?

 やめとけやめとけ。どうせ勝てやしねぇよ。

 今なら俺様のジヒで楽に殺してやるぞ?」


 にやつきながら話す、ボスと思われる男。

 気配や体格から察するに、冒険者崩れから身を落とした輩だろう。


 だがやるべきことは変わらない。

 相手がいかに強かろうと、許せるわけがないのだから。


 ボスを取り巻くように、4人の下っ端が武器を構えた。

 ひとりは麻痺毒でひっくり返っている。

 これで1対1の戦いに持ち込める。


 下っ端どもに詰め寄るディートリヒ達。

 その隙を狙い、ボスの目の前まで俺は走り抜けた。


「そうかよ。じゃあ仕方ねぇな。

 ――楽に死ねると思うなよッ!!」


 濃密な殺意を放つ男に、俺の足は止まる。

 構える剣が小刻みにかたかたと震えていた。


「あ? なんだ、お前。

 防具もつけずに俺とやろうってのか?

 なめてんのか? おまけに剣が震えてんぞ。

 お前、人斬ったことねぇだろ?」

「……それが、なんだ?」

「は! 馬鹿が! オシメも取れてねぇガキが出しゃばるんじゃねぇッ!!」


 振り下ろした鋭い剣撃に仰け反りながら回避する。

 視線をボスへと向けると、すでに次の攻撃が繰り出される瞬間だった。

 真下からの速い切り上げにとまどいながらも、大きく身体を逸らして避ける。

 身体を戻す前に振り下ろされた剣を見ながら地面を転げるように逃げた。


 片膝をつきながらも剣を構え、荒い呼吸を整える。

 その姿に下卑た笑いをしながら、男は話した。


「おーおー、情けないねぇ。ガキには避けるのが精一杯かよ。

 残念だが、お仲間達は俺の手下どもの相手で手が離せないとよ」


 4人の部下は外に転がした二人の下っ端とは違うようだ。

 あいつらもまた冒険者崩れから落ちた連中なのだろう。

 とても戦い難そうにディートリヒ達は剣を交えていた。


「は! ガキひとりで俺様を相手にするには役不足だったな!

 それともハナっから倒すつもりじゃなくて、ただの時間稼ぎか?

 どっちにしても、お前らがここで死ぬのは変わんねぇんだ。

 その僅かな時間は、俺様を楽しませるためだけに使えよな!」


 一気に距離を詰め寄るボス。

 強烈な一撃を放たれ、必死の思いで避ける。

 数少ない隙を狙い、俺は強引に剣を振るった。


「うわああッ!」


 闇雲に剣を振ったのが功を奏したのか、ボスの腕に傷を負わせた。

 その衝撃に視線を向けた男は、つまらなそうに見つめる。


「あ? なんだこりゃ? 血ぃ出てんな。

 こんなかすり傷じゃ俺様は殺せないぞ?

 ……だが」


 目つきが激変し、怒りを爆発させるように殺意を向けた。


「俺様の腕に毛ほどでも傷をつけたんだ!!

 殺す前に腕の一本は切り飛ばしてやるぞクソガキがッ!!」


 先ほどとはまるで違う剣速に、地面を転がるように移動する。

 逃がさんとばかりに魔法具を使う男は魔法を放つ。


 大きめの石塊が小手から飛び出し、襲い掛かる。

 思わず俺は、その光景を目にして言葉が出てしまった。


 こんな程度か、と。


 眼前に迫る石ころを、俺は一突きで消失させた。

 想像していたものよりもずっと完成度が低く、非常にもろい。

 これは魔導具によるものではなく、単純な練度の差だ。


 やはりエックハルトが話していたように、冒険者崩れと彼の鍛錬した魔法とでは練度に相当の開きがあると感じられた。


 放った魔法を霧散され、驚愕する男は言葉が出ずに固まる。

 その僅かな時間を見逃すほど、俺は優しくない。

 瞬時に距離を詰め、側面から強烈な横薙ぎを延髄に直撃させる。

 それが決定打となり、意識を保てなくなった男は洞窟内に大きな音を響かせながら倒れ込んだ。


 その音に反応してボスへと視線を向けた手下どもは戦意喪失した。

 確かにそれだけの強さが転がっている男にはあったことは間違いないだろう。

 3人が諦めたように武器を落とし、そのまま地面に座り込んだ。


「――あ!? 逃げんなコラッ!」


 フランツの相手がその場から全力で逃亡し、驚きながらも言葉にする。

 追いかけようと彼が足を前に出すよりも早く俺は行動に移した。

 彼を一気に追い抜き、盗賊の背後から首を左手で掴みながら左足を男の足に合わせ、強引に地面へ叩きつけて気絶させた。


 それを見た座り込む3人の盗賊達は、青ざめながら言葉を失っていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告がないようなので、 「ガキひとりで俺様を相手にするには役不足だったな」 ここは役不足ではなく力不足では?
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