こう思うんだ
大切なことだと思って聞いてくれていれば嬉しいが。
希望を込めてそう考えていると、エルルは鉄串を皿に置き、静かに言葉にした。
「……トーヤはさ、とっても優しい人なんだよ。
あたしみたいな良くわかんない子だって引き取っちゃうくらい。
あの人達のこともそう、トーヤくらいの強さがあれば剣で切っちゃうことだってできるのに、なるべく傷つけない方法で戦ってる。
きっといつも、トーヤはそうやってきたんだね。
できるだけ傷つけないように、誰かを護る戦い方をこれまでしてきたんだね」
空を見上げながらエルルは言葉を続ける。
それは、ここではないどこか遠い"別の空"を見ているようにも思えた。
「あたしは、あたしがなんなのか、よくわかんないんだ。
この世界の女神だなんて言葉にしたけど、はっきりとそれを自覚してるわけでもないし、それが正しい記憶なのかも正直に言えばまったくわかんない。
不安で、寂しくて、怖くて、北に行きたいってふんわり思っててもそれが正しいのかもわかんないし、ひとりだったらどうしていいのかわかんなくて座り込んでたと思う」
ゆっくりと視線をこちらに向けたエルル。
その瞳はとても美しく、何よりも尊く思える輝きをしていた。
「でも、トーヤは約束してくれた。
あたしを家まで送り届けてくれるって。
それがどれだけ温かい言葉だったか、伝えきれないくらい嬉しかった。
だからね、あたしはこう思うんだ。
トーヤが言う"優しい強さ"を、あたしたちは持つべきなんだって。
誰かを傷つける力は強さなんかじゃないんだよね?
大切な人を護れるのが本当の強さなんだよね?
トーヤのそばにいれば、きっとそれを手にすることができる。
あたしは、ううん、あたしたちはそう思えるんだ」
どこか涙してしまいそうな瞳でエルルは言葉にした。
そして満面の笑みのまま、フラヴィも答えた。
「ふらびいはね、ぱーぱがだいすき。
でもね、ぶらんしぇも、えるるおねえちゃんもだいすき。
きのおねえちゃんも、ふらびいはだいすきなの。
ずっとずっと、みんなといっしょにいたいの。
だからね、ふらびい、つよくなるよ。
つよくなって、みんなをまもるの」
「わぅ! わぅわうぅわうっわぅっ!」
「ぶらんしぇも、みんなをまもれるくらい、つよくなるって」
「……そうか」
瞳を閉じて俺は感慨に浸る。
どんなに幼くても、みんなしっかりと意思を示してくれた。
魔物だからとか、子供だからとか。
そんなものは言い訳にすらならない。
この子達の強い意思に、俺は応えなければならない。
その気持ちに、その願いに、俺は応えなければならない。
でも大丈夫だ。
こんなにも優しい子達なんだから。
こんなにも誇らしい子達なんだから。
だから、俺に言えることはひとつだ。
「みんなで強くなろう。
大切な"家族"を護れるくらい、強く」
「うんっ」
「わうっ」
「あたしも頑張る!
いっぱい食べて、いっぱい強くなるんだ!」
はむっと鉄串の肉にかぶり付くエルルに続き、ふたりも食事に戻った。
逆に俺の食欲は落ち着きをみせ、胸がいっぱいになっていることに気がつく。
随分と嬉しい言葉を伝えてくれたが、あれはきっとエルルだけじゃない。
フラヴィとブランシェの想いも伝えてくれたのだろう。
それが何よりも俺には嬉しく思えた。




