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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第七章 後悔をしないように
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面倒事は最小限で

 ギルドを出て街門近くまで歩くと、エトヴィンは立ち止まって言葉にした。


「それじゃ、俺は通常業務に戻る」

「色々と助かったよ、ありがとう」

「いや、話さなきゃならんことだったし、何より面白い話も聞けた。

 こっちこそ感謝したいくらいだな」


 楽しそうに笑う彼を見ながら、こっちはこれから大変なんだがと憂いていると、そんな気持ちを察してくれたのか真剣な面持ちで彼は答えた。


「俺にできることがあれば力になる。

 とはいえ、この町に限ってになっちまうが、それでも憶えておいてくれ」

「あぁ、ありがとう。

 その気持ちだけでもすごく嬉しいし、心強いよ」


 何かあればまた街門で俺を呼んでくれ。

 そう言葉にした彼は、この場を後にした。


 心の中で感謝をしつつ、3人に話しかけた。


「それじゃあ、まずは明日乗る馬車を探すか」

「うんっ」

「わふっ」

「おーっ」


 元気に答える3人だが、傍目から見ればふたりの子持ち男になるんだろうか。

 俺がそんな年に見えるとも思えないが、顔立ちが幼い大人も多いらしいし、親として周りからは認識されていそうだな……。


 まぁ、別段悪くも思えないが。



 *  *   



 このデルプフェルトは東西南北にそれぞれ巨大な門が設けられ、魔物や時として人を寄せ付けない構造となっている。

 これはどこの国、どこの町でも多少違えど似た造りのようだ。

 外敵から身を護るには強固な壁と、強靭な兵士や警備隊を置くのが一般的だ。


 小さな村や集落では丸太でこさえた簡易的なものと、兵士や衛兵、自警団がひとりで入り口を護っているのもこの世界ではわりと良くあることらしい。


 とはいえ、最低限でも護れるだけの壁や柵は必須となっている世界だ。

 そういった点から考えると、いかに日本が安全な国なのかを再認識させられる。

 強盗や殺人など凶悪事件も多発しているが、思えばここよりは遙かに安全で安心して国民が暮らしていたようにも感じるのは、この世界に降り立ってすぐ盗賊と揉めているからそう思えるのかもしれない。


 この世界での移動は、一般的に徒歩か馬車の2択になる。

 町と町を結ぶ街道は整備されていなくとも、何十年と通行人や馬車が踏み固めてきた場所なので安定して進めるそうだ。

 それでもこの間の大雨のようなことが起こると、ぬかるむ道も多く出てくる。

 そういった対処もできなければ、馬車を持っての移動は困難になるそうだ。


 この周囲ではもう無法者もいないと、ギルド側や憲兵達からは思われている。

 それを鵜呑みにはできないが、徒歩と馬車での移動は随分と意味が異なる。

 どうせなら運んでもらえる方が楽だし、大幅な時間の短縮になるだろう。

 そして何よりも安全だ。


 基本的に乗合馬車は魔物を討伐できる者を数名か、目的地へ向かう冒険者と一緒に行動するのが一般的で、御者と客だけでの移動をすることはまずない。

 運賃が最安値の馬車では護衛する者がいないことが多く、所持金が心許ない魔物と戦える冒険者は頻繁に使うが、そうでない者が利用することはないと言われる。


 今回、俺達が利用するのは、一般的な護衛つきの乗合馬車だ。


 これにも理由がある。

 俺はいかにも初心者と思われがちな軽装だし、何よりも子連れだ。

 御者に心配されるのも悪い気がするという意味も含むが、子供を3人も連れた状態で最安値の馬車は乗るべきじゃない。

 それこそ馬鹿どもを寄せ付ける効果もあるかもしれないからな。


 腰に剣を携えているので一般人を装いながら移動するわけじゃないが、それでも面倒事は考えうる限り最小にするつもりで進むべきだと思えた。


 まぁ、襲撃者がいないとも限らないし、警戒は常にするべきだが。

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