掴まされた時点で
色々と話を聞いてみたが、やはり指輪をギルドで預かることは難しいらしい。
あくまでも法律上は、ということだが、心情的には力になりたいがとふたりは申し訳なさそうに話してくれた。
「……すまんのぅ、トーヤ殿。
これでもギルド長として法を逸脱するわけにもいかんのじゃよ」
「俺も似たような理由だが、あくまでも俺はこの町の憲兵だからな。
さすがにそこまでの厄介事となると、関わろうとしても力になりきれないんだ」
「そのお気持ちだけで十分ですよ。
それに、これを掴まされた時点で覚悟はしていました。
とりあえずは北に向かいながらギルドで情報を集めます。
この辺りに貴族が出歩く理由も思い当たらないですし、迷宮都市に向かってる可能性がありますね。
それこそボンクラの道楽説も浮上してきますが、あの都市は裏と根深い組織があるらしいですし、それ目的かもしれないですね。
……まぁ、なんとかなるでしょう」
楽観的な言葉を出すが、内心では面倒なことこの上ないと思っていた。
その気持ちがはっきりと伝わったんだろう。
思わず3人で同時に深くため息をついてしまった。
とはいえ、当初の目的と大きな変更点はない。
北を目指しながらエルルの故郷を探しつつ、ついでに指輪の情報収集か。
とりあえず大きな目的地は迷宮都市だな。
ディートリヒ達と再会する前に指輪を処分したい。
この件に彼らを巻き込むわけにもいかない。
最終的にはこの世界から出ることが目的だし、彼らはこれからもずっとこの世界に居続けるんだ。
迷惑をかけるような恩知らずにもなりたくないしな。
そうだ、もうひとつ手に入れていたものがあったな。
「そういえば、男達が持っていた荷物にこんなものがあったんですよ」
「なんだ、古びた地図か?
……なにか色々と書いてあるが、まさか宝の地図なのか?
随分と汚れているし、どうせ偽物だろ?」
「俺もそう思います。
こういったものは偽の地図を大量にバラ撒いたりするものでは?」
「ありそうだな、それは。
まぁお宝なんてもんは、そうそう見つかるもんじゃないだろ。
それこそザクザク手に入ったら、誰でも大金持ちになれるからな」
「その通りですね」
声を出して笑う俺たちの耳に、小さく呟く声が届いた。
「……そうとも、言えんかもしれんぞ」
「これについて何か知ってるんですか、ローベルトさん」
「…………まさかのぅ……。
これほどの歳月を経て、こんな物が世に出てくるとは思いもよらなんだ……」
神妙な顔つきの彼は、ここではないどこかを見つめていた。
それはまるで、現役冒険者の光が瞳に鋭く灯っているようにも見えた。
「……これはの、トーヤ殿。
200年ほど前にこの国を荒らし回った大盗賊が残した、財宝のありかを記す地図のようじゃの……。
当然、数多くの偽物が出回っておるが、中でもこれは一番信憑性が高いのぅ。
ワシも文献以外で本物と思われるものを見たのは初めてじゃよ……」
その言葉が正しいのかは俺にはわからないが、彼が本気で信じていることだけは痛いほど伝わってきた。