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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第七章 後悔をしないように
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信頼の置ける者に

 ギルドマスターってのは精神的にも大変な職業なんだろうな。

 働いたこともない子供が言うべきことじゃないが、配達依頼の手紙を開封するなんてありえないと思えるんだが、そういった"学のなさ"も中世レベルなのか?


 下手をすれば識字率も相当低い可能性があるな。

 実際の中世がどの程度のレベルだったのかはわからないが、少なくとも現代に比べればかなりひどいと思える。

 "代筆屋"なんて職業もあるかもしれないな。


「移動しない相手に手紙を届けるのは楽な仕事ですね。

 北の町まで馬車で連れていってもらえるし、届けるだけで金をもらえることに違和感を覚えますが、その分報酬も少なめってことなんでしょうね」

「そうじゃのう、さすがに大金は出せないの。

 その点は悪く思うが、これも立派な仕事じゃて」

「ちなみにどのくらいいただけるんですか?

 6000ベルツくらいでしょうか?」

「5万ベルツじゃよ」


 ……金銭感覚がおかしくなりそうだ……。

 顔を見ると冗談ではないみたいだが、いくらなんでもそれは……。


「ふむ、高いかの?」

「……さすがにそう思いますね。

 手紙一通に5万ベルツは高すぎるかと」

「まぁ、その気持もわからなくはないんだがな。

 ひとつは隣町とはいえ配達に危険が伴うことが関係する。

 無法者が馬車を襲う事件が最近起こっているし、こういったギルドマスター同士のやり取りに興味を持つ馬鹿冒険者も出てくるんだ。

 手紙を届けるだけで5万ってのは、一概に報酬が高いとも言えないんだぞ」


 危険手当を考えればそれなりに高額になる、という意味もあるのか。

 ギルドマスターが関わっていることも値段を上げている理由のひとつでもあるんだろうけど、それでも1通5万ベルツは多いと思えるな。

 これはあれか、違約金と罰金を上げるためなのかもしれないな。


 さすがに人様の手紙の中身を覗こうなんて考えたこともないが、そういった連中がいるからこそ信頼の置ける者に託そうとするんだろう。

 ……やはりすべては教育のなさから来ているんだろうか……。


「俺にできることならしますよ。

 本人に直接渡す必要は?」

「ないの。

 ギルドの受付に提出すれば、そのまま報酬をもらえる手筈になっとるよ。

 詳細は面倒な話だから割愛するが、この手紙を受付に提出するだけでそう判断される仕組みでの、配達する冒険者は興味も示さない事務的な話になるのぅ」


 その辺りは想像に難くない。

 どこの世界もお役所は面倒事を処理してくれているんだろうな。

 これについては職員にならなければあまり深く気にすることもないか。


「わかりました。

 手紙の配達依頼を受けさせていただきます」

「感謝するよ、トーヤ殿。

 そこまで重要な手紙ではないが、これで安心できるわい」


 ……本当に、苦労が絶えないんだな。

 そう思えてしまう彼の言葉に、苦笑いしか出なかった。



 ……さて、本題はここからだ。

 目の前にあるテーブルに厄介なものをことんと置いて訊ねた。


「実はこんな物を手にしたんですが、これについて何か知っていますか?」

「……これは……。

 …………なるほど、トーヤ殿には厄介事の方から足を運ぶようだのぅ……」


 半ば同情だろうが、どこか良く知った体験のようにローベルトは話しているようにも思えた。

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