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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第七章 後悔をしないように
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中立にいる必要が

 続けて問題となるエルルの話になるも、ここで嘘をつくわけにはいかない。

 たとえ真実を話したところで悪い扱いは受けないはずだが、右隣に座る彼女はこの話になった途端、俺の服を掴んで離さなかった。

 少々顔色を悪くしながら小刻みに震えているこの子にどうしたもんかと考えていたが、男達の話のあらましに入るとこの子は立ち上がり、勢いよく言葉にした。


「……そこでこの子はあいつらに追われ「追われてない!」」

「何を言って――」

「――私はひとりで林を歩いてたの! お散歩してたの!

 そこにトーヤ達が通りかかって出会ったの! それだけ!

 あいつらはあたしと関係ないし、ひどい目にも遭ってない!」


 ……それは……さすがにすぐバレると思うんだが……。

 ほぼ自分自身で何があったのかを告白したようにしか聞こえない言い方をしているのを、この子は気がついているんだろうか……。


 だが、この子の言いたいこともわかる。

 普通に報告すれば、あいつらがどうなるかはわからない。

 最悪の場合を考えたら、今回の件をなかったことにしたいと思ったエルルの気持ちもわからなくはない。

 懸命に言葉にする彼女の想いがわからないわけでもないが、実際にそれは大人の世界では通用しないんじゃないだろうかとも思える。


 何よりも、あいつらはそれを自白する。

 もうしている可能性も高いし、すべてをなかったことにするとあいつら自身の立場も悪くなりかねない。

 これだけの剣幕なら、あいつらに脅迫されているとは判断されないだろうが。



 ちらりとふたりへ視線を向けるも、やはり困ったように彼女を見ていた。

 彼女の想いを後押しするわけじゃないが、連中の話をエルルに続いてし始めると、やはり相当悩みながら考え込んでしまった。


 本来であれば調査と尋問をして、容疑が固まり次第この国の法で裁くんだろう。

 そこにたとえ感情論で訴えたところで、法の前には意味をなさない。

 感情で左右されるのなら、そもそも法などあってないようなものになる。


 もしそれがまかり通るなら、それこそ演技の上手いやつが得をする。

 そして言葉足らずが罪を重く背負う世界になってしまうだろう。


 そんなこと、絶対にあってはならない。

 公平に罪を裁くには、どちらかの意見に耳を傾けない中立にいる必要がある。

 だからこそ罪に対し罰する人間は高潔であるべきだし、実際にそうでなければならない。

 感情論に涙するような人間を、裁くべき立場に置くのは間違いなんだから。


 ……でも。


「――それでも俺は、ふたりの言葉を信じてもいい(・・・・・・)と思うんです。

 何かあれば責任を取れるような場所に俺はいませんし、とても無責任で虫のいい話ではありますが、それでもあいつらが何かとんでもないことを仕出かしたなら、世界のどこにいても俺を呼び出していただいてかまいません。

 可能な限り最優先で駆けつけるし、その償いを俺の手でさせてもらいます。

 だから――」

「ホッホ。

 そう気負う必要もあるまいて」


 俺の想いに答えるように、ローベルトは言葉にした。

 それはどこか嬉しそうな表情にも見えた。

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